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文献詳細

雑誌文献

胃と腸58巻6号

2023年06月発行

文献概要

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編集後記

著者: 江﨑幹宏1

所属機関: 1佐賀大学医学部内科学講座消化器内科

ページ範囲:P.835 - P.835

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 近年の遺伝子解析技術の進歩に伴い,これまで分類不能腸炎といった枠組みに分類せざるをえなかった(広義の)炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)の中には,疾患発症あるいは疾患修飾に単一遺伝子におけるバリアントが関与するようなmonogenic IBDやMEFV遺伝子関連腸炎などが含まれることが明らかとなってきた.さらには,疾患特異的バイオマーカーの探索が進むにつれ,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)やCrohn病(Crohn's disease ; CD)といった狭義のIBDにおいても,生検や画像診断などの所見ではIBDU(IBD unclassified)に分類せざるをえない症例がバイオマーカーを用いることによりUC,CDのいずれかに分類しうる可能性も出てきた.このようなIBD診断における近年の進歩を踏まえて,本特集号ではIBDUの現状に加えて,やむなくIBDUに区分する段階で鑑別すべき他疾患の特徴を網羅することを目的とした.本特集号に掲載されている各論文を通読いただければ,本特集号の目的が十分達せられていることがおわかりいただけよう.
 ところで,今回の特集号のタイトルをご覧になった読者の中には,序説で平井郁仁先生が指摘されているように違和感を覚えた方々も少なからずおられるものと推察する.すなわち,分類不能腸炎は厳密にはIBDU,IC(indeterminate colitis)のいずれともイコールではないことである.従来,術後切除標本の病理組織学的な検索を行ってもUC,CDの確定診断が得られない症例はICの名称が使用されてきた.しかしながら,UC,CDの確定診断が得られない症例には手術が行われず内科治療が継続される症例のほうがむしろ多く,これらの症例に対してもICの名称が使用されてきたため,本来のICの定義と齟齬を生じる結果を招くこととなった.このような背景から,内視鏡や生検を含めた臨床像からUC,CDの確定診断が得られず,かつ大腸非切除症例には新たにIBDUの呼称が用いられるようになった.一方,分類不能腸炎といった和文呼称は,狭義のIBDを念頭に置いた場合と,腸型Behçet病や腸結核なども含めた広義のIBDを念頭に置いた際にいずれの疾患概念にも当てはまらない症例に用いる場合とがある.逆に,分類不能腸炎にIC,IBDUのいずれも用いずに英語表記をするのであればunclassified(entero)-colitisとなるであろうが,あまり耳慣れない英語表記を用いることでかえって混乱を招く可能性,本特集号の主旨とタイトルにズレを生じる可能性を危惧した.結果として,本特集号の企画小委員である筆者自身も分類不能腸炎=IBDUと表記することにかなりの違和感を感じつつも,適切な和文呼称がないためやむなくこのような表題にしてしまった.IBDU,ICの厳密な定義をご存知の読者の方でタイトルに不満を感じられた方がおられたのであればこの場を借りてお詫び申し上げる.IBDUあるいはICを的確に区分できる和文表記を決定することは今後の課題であろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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