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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸58巻7号

2023年07月発行

雑誌目次

今月の主題 消化管リンパ増殖性疾患の診断アプローチの基本 序説

日常診療における消化管リンパ増殖性疾患

著者: 上堂文也

ページ範囲:P.841 - P.842

 リンパ増殖性疾患は生理的なリンパ節腫脹やリンパ増多症を除く,リンパ増殖症の総称である.消化管におけるリンパ増殖性疾患の代表的なものは悪性リンパ腫であるが,近年HIV(human immunodeficiency virus)感染に伴う日和見腫瘍,同種臓器移植患者,自己免疫疾患患者での免疫抑制剤投与により発生する医原性腫瘍が注目されている.
 悪性リンパ腫は病理組織学的にはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,Burkittリンパ腫,T細胞性リンパ腫,古典的Hodgkinリンパ腫などさまざまな像が認められるが,最近ではHE染色による異型リンパ球の形態学的な診断(大きさ・形状と濾胞形成の有無)に加えて,さまざまな免疫組織化学染色や染色体・遺伝子検査によって診断や分類が行われている.また,治療もHE染色による病理組織学的所見に応じた殺細胞性薬剤による化学療法が主体であったが,最近では分子標的薬や放射線治療の併用や,疾患によってはH. pylori(Helicobacter pylori)除菌治療や免疫不全状態の改善(免疫抑制薬投与の中止)により可逆性を示す場合があることも特徴で,そのためにも正確な診断は不可欠である.

主題

消化管リンパ増殖性疾患の分類—病型・疾患単位の分類を中心に

著者: 二村聡 ,   石橋英樹

ページ範囲:P.843 - P.852

要旨●リンパ腫は最も頻度の高い血液・リンパ系腫瘍であり,国内新規罹患数が年々増加している.リンパ腫の病型・疾患単位(type/entity)分類は,いくつもの混乱を乗り越え,現在のWHO分類に至っている.WHO分類は,第3版以降,一貫してリンパ系腫瘍を細胞系列によって区分し,それぞれのカテゴリーの中に細胞・組織形態,免疫学的表現型,染色体・分子異常,臨床病態のすべてにより定義される病型をリスト化している.その最新版にあたる第5版(2022年公表)では,新たな病型の追加や名称変更などがなされている.今後も,新たな科学的根拠が得られるたびに新しい疾患概念や病型が提唱されることが予想されるが,分類の基本理念に大きな揺らぎはない.臨床医も病理医も,分類やその歴史的背景を理解し,適切に運用することが重要である.

消化管リンパ腫の病理診断—その実践的アプローチ

著者: 藤島史喜 ,   福原規子 ,   小池智幸 ,   浅野直喜 ,   金笑奕 ,   志賀永嗣 ,   嶋田奉広 ,   一迫玲 ,   鈴木貴

ページ範囲:P.853 - P.861

要旨●消化管原発リンパ腫は,基本的な診断方法は他部位に発生するリンパ腫と変わりないが,内視鏡下に採取された小さな生検検体で診断を求められることが多い点が他部位との相違点と思われる.多くの施設で日常的にフローサイトメトリーなどの解析を行うことは一般的になっていないが,治療に際しては他の部位に発生するリンパ腫と同様,WHO分類に沿った亜型分類を行うことが必要であり,消化管のリンパ腫診断においても多角的解析を行える体制を準備することが必要である.小さな生検検体であっても,複数個採取することで種々の解析が可能となる症例は多く,極めて有効なツールとなりうることから,正確な診断・適切な治療につなげることが可能となる.

消化管B細胞リンパ腫の内視鏡所見の特徴

著者: 岡田裕之 ,   田中健大 ,   岩室雅也

ページ範囲:P.863 - P.870

要旨●消化管リンパ腫で頻度の高いMALTリンパ腫,濾胞性リンパ腫(FL),びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL),そしてマントル細胞リンパ腫(MCL)の内視鏡像について概説する.MALTリンパ腫の胃病変は表層型が多く,腸管病変は粘膜下腫瘍様隆起所見が多い.FLは十二指腸下行部のびまん性白色顆粒状隆起が特徴的である.腸管病変はリンパ濾胞増生様所見がみられ,時にMLP(multiple lymphomatous polyposis)も認められる.DLBCLは耳介様周堤を有する決潰型が特徴的である.MCLの胃病変は多彩で表層型,皺襞腫大型,隆起型,潰瘍型を呈する.腸管病変では多くがMLP所見を呈する.

消化管T細胞リンパ腫の内視鏡所見の特徴

著者: 石橋英樹 ,   二村聡 ,   平井郁仁 ,   竹下盛重

ページ範囲:P.871 - P.879

要旨●消化管T細胞リンパ腫のうち,本邦で頻度が高い単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL),成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL/L)の内視鏡像,臨床病理学的特徴について解析した.MEITLは,小腸を中心に全消化管に病巣を形成し,肉眼像は潰瘍性病変が最も多い.背景粘膜は,浮腫状または粗糙粘膜で,病理組織学的には腸管症様またはリンパ球性大腸炎様の所見を示す.ATL/Lは,臨床病型により内視鏡像に相違がみられ,リンパ腫型は腫瘤形成型,急性型は表層拡大型が多い.臓器別では,胃病変は腫瘤形成型が多く,胃癌との鑑別を要し,腸病変は腸炎類似の多発性・びまん性病変が多く,炎症性腸疾患を含めた腸炎との鑑別を要する.

主題症例

下咽頭MALTリンパ腫—鑑別のポイントを中心に

著者: 中西宏佳 ,   竹村健一 ,   片柳和義 ,   湊宏 ,   土山寿志

ページ範囲:P.880 - P.883

要旨●NBIや拡大内視鏡などの内視鏡機器の発展や,観察方法などの工夫を背景に,EGD時に咽頭領域の病変が発見される機会が増えている.拾い上げるべき咽頭所見としては,咽頭癌,リンパ腫,乳頭腫などの腫瘍性病変の他,リンパ濾胞,メラノーシス,放射線照射後にみられる炎症性変化などの非腫瘍性病変がある.本稿では,咽頭領域ではまれな疾患である下咽頭のMALTリンパ腫について述べる.

食道MALTリンパ腫—診断のポイントを中心に

著者: 小山恒男 ,   高橋亜紀子 ,   塩澤哲

ページ範囲:P.884 - P.892

要旨●食道MALTリンパ腫はまれな疾患だが,主座が粘膜下層であるため,SMT様形態を呈する.細胞成分が多いため軟らかく,クッションサイン陽性となる.上皮内へ浸潤すると増殖帯を破壊し,境界不明瞭な陥凹を形成する.組織学的には粘膜下層を主座とする濾胞様構造を呈するため,EUSで粘膜下層を主座とするhypoechoicなリンパ濾胞様腫瘤として描出される.縦走方向に進展すると巨木様形態を呈し,内視鏡で狭窄様に見えるが,軟らかいため自覚症状に乏しい.鑑別診断はleiomyoma,GCT等が挙げられ,MALTリンパ腫は軟らかく,EUSで濾胞様構造を呈する点で鑑別可能である.確定診断には粘膜下層からの確実な生検が必要である.

胃MALTリンパ腫—胃癌との鑑別点を中心に

著者: 古谷建悟 ,   平澤俊明 ,   高松学 ,   池之山洋平 ,   並河健 ,   渡海義隆 ,   吉水祥一 ,   堀内裕介 ,   石山晃世志 ,   由雄敏之 ,   藤崎順子

ページ範囲:P.893 - P.896

要旨●胃MALTリンパ腫は多彩な内視鏡像を呈し,胃癌との鑑別が困難となる場合がある.特に未分化型早期胃癌(0-IIc型)および胃底腺型腺癌は,MALTリンパ腫と類似した所見を示すことがある.未分化型早期胃癌との鑑別では,腫瘍境界の所見および蚕食像の有無を評価することが有用である.一方,胃底腺型腺癌との鑑別では,病変の大きさや分布の違いが参考となる.さらに,MALTリンパ腫は多発病変を認めることが多いが,胃癌は主に単発病変である.拡大観察における特徴的な血管構造(tree-like appearance)も重要である.本稿では,胃MALTリンパ腫の内視鏡像と病理組織学的診断の要点について,胃癌との鑑別を中心に解説する.

胃DLBCL—胃癌との鑑別点を中心に

著者: 小田丈二 ,   入口陽介 ,   水谷勝 ,   依光展和 ,   金田義弘 ,   岸大輔 ,   安川佳美 ,   霧生信明 ,   神谷綾子 ,   清水孝悦 ,   山村彰彦 ,   細井董三

ページ範囲:P.897 - P.903

要旨●患者は70歳代,女性.特に自覚症状なく,200X年に検診目的で施行したEGDで異常を指摘され,当センターに紹介され受診となった.胃体部後壁にSMT様の立ち上がりを有する病変を認め,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断にて幽門側胃切除術を施行した.決潰型の胃DLBCLでは進行胃癌との鑑別を要する場合も少なくないため,形態的に類似した胃癌症例を提示しながら鑑別のポイントについて述べる.

リンパ腫様胃症—鑑別のポイントを中心に

著者: 海崎泰治 ,   原季衣 ,   青柳裕之 ,   波佐谷兼慶

ページ範囲:P.905 - P.909

要旨●リンパ腫様胃症(lymphomatoid gastropathy)は胃の良性NK/Tリンパ球増殖症で,臨床的に数か月で自然消退する特徴がある.内視鏡的には発赤の強い1cm弱の小隆起もしくは陥凹性の病変を認め,“血豆様”とも表現される.病理組織学的には,粘膜固有層に細胞質内に好酸性顆粒を有する中型リンパ球の密な増殖から成り,上皮の変形を伴うNK細胞性lymphoepithelial lesionを伴う.鑑別疾患としては,内視鏡的にも病理組織学的にも悪性リンパ増殖性疾患が問題となる.

胃メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例—胃癌との鑑別の視点から

著者: 吉村大輔 ,   吉武千香子 ,   原田直彦 ,   水流大堯 ,   本間仁 ,   大久保彰人 ,   福谷洋樹 ,   糸永周一 ,   佐々木泰介 ,   濱田匠平 ,   藤原美奈子 ,   桃崎征也

ページ範囲:P.910 - P.914

要旨●患者は70歳代,女性.関節リウマチに対して14年来のメトトレキサート(MTX)内服歴を有する.心窩部痛のため施行されたEGDで,胃角部および前庭部小彎から後壁に広範な潰瘍性病変を認めた.病変はその大きさに比して空気伸展が良好で厚みがあり,内部は白苔に覆われなだらかな凹凸を呈し,辺縁に上皮性病変を示唆する陥凹面はなかった.潰瘍辺縁からの生検では異型を伴う中〜大型のリンパ球が粘膜固有層に密に増生し,免疫組織化学染色でCD20およびKi-67陽性細胞をびまん性に認めた.MTX関連リンパ増殖性疾患(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)と診断し投薬を中止後の内視鏡的経過観察では病変は速やかに自然消退し,以後再発を認めていない.

十二指腸濾胞性リンパ腫—白色絨毛との鑑別を中心に

著者: 永塚真 ,   鳥谷洋右 ,   山田峻 ,   大泉智史 ,   杉本亮 ,   春日井聡 ,   梁井俊一 ,   上杉憲幸 ,   栁川直樹 ,   遠藤昌樹 ,   菅井有 ,   松本主之

ページ範囲:P.915 - P.920

要旨●患者は70歳代,男性.胃癌術後の経過観察目的に施行したEGDで,十二指腸下行部に顆粒状隆起が集簇していた.色素撒布で隆起および結節の大小不同が明瞭となり,さらにNBI拡大観察では絨毛の腫大と絨毛内部の不透明な白色物質,および拡張した血管が観察された.同部位からの生検で上皮下の間質に小型異型リンパ球の濾胞様増殖を認め,免疫組織化学染色からGrade 1の濾胞性リンパ腫(FL)と診断された.十二指腸下行部に白色顆粒状隆起を認めた場合は,FLを念頭に置いて白色絨毛を呈する疾患の鑑別を進める必要がある.

multiple lymphomatous polyposisを伴うindolent消化管マントル細胞リンパ腫の1例

著者: 村上敬 ,   八尾隆史 ,   樺映志 ,   野村慧 ,   芳賀慶一 ,   福嶋浩文 ,   澁谷智義 ,   永原章仁

ページ範囲:P.921 - P.927

要旨●患者は60歳代,女性.便潜血による近医での大腸内視鏡検査で回腸終末部にリンパ濾胞様顆粒の集簇を認め,精査加療目的に当科へ紹介され受診となった.大腸内視鏡検査では,回腸終末部および回盲弁,S状結腸・直腸に表面平滑で光沢のある大小不同の多発するポリポーシス(MLP)を認め,生検を施行した.病理組織学的には,粘膜内にくびれた核を有する小〜中型の異型リンパ球がびまん性に増殖していた.CD20,CD5,Cyclin D1,Bcl-2が陽性,CD3,CD10が陰性であり,マントル細胞リンパ腫(MCL)と診断した.PET-CTでは回盲部の壁肥厚と,回結腸動脈周囲リンパ節,両側頸部リンパ節,左腋窩リンパ節の腫大とFDG(fluorodeoxyglucose)の弱い集積を認めた.骨髄浸潤は認めず,Ki-67陽性率も低値であることから,indolent MCLを疑い現在経過観察しているが,無症状で著変なく経過している.

経過中に小腸に再発病変を来した狭窄型DLBCLの1例—小腸悪性腫瘍との鑑別を中心に

著者: 江﨑幹宏 ,   芥川剛至 ,   下田良 ,   行元崇浩 ,   島村拓弥 ,   板村英和 ,   與田幸恵 ,   甲斐敬太 ,   川崎啓祐 ,   木村晋也 ,   能城浩和

ページ範囲:P.929 - P.935

要旨●患者は80歳代,女性.腹部造影CT検査で多発する腹腔内リンパ節腫大を指摘され,左鼠径部リンパ節生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された.DLBCLに対して化学療法が施行され寛解となったが,4年目の経過観察目的の画像評価で上部小腸に再発病変を認めた.内視鏡検査では境界が比較的明瞭な全周性の不整形潰瘍を認めたが,潰瘍底の不整は乏しい印象であった.X線造影検査では高度の腸管狭窄を呈するものの,口側腸管の拡張は目立たなかった.腸管穿通による膿瘍形成を合併したこともあり,小腸部分切除術が施行された.病理組織学的には,潰瘍形成部に一致して中型〜大型の異型リンパ球の腫瘍性増殖を認め,免疫組織化学染色の結果と併せてactivated B-cell型のDLBCLと診断した.

小腸T細胞リンパ腫—小腸Crohn病との鑑別を中心に

著者: 松本啓志 ,   葉祥元 ,   笹平百世 ,   三澤拓 ,   松本正憲 ,   大下智弘 ,   大澤恵一 ,   杉山智美 ,   山内美翔 ,   川人一真 ,   二ノ宮壮広 ,   大澤元保 ,   半田修 ,   梅垣英次 ,   塩谷昭子

ページ範囲:P.937 - P.940

要旨●患者は60歳代,男性.下血を主訴に受診した.上下部消化管内視鏡検査では明らかな出血源は認めなかった.小腸内視鏡にて長径約3cmの全周性狭窄および輪状潰瘍を認めた.生検による穿孔の危険性があるため外科手術で切除し,確定診断した.単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)は,全消化管にアフタ性潰瘍,多発潰瘍など多彩な病変が正常粘膜を介して認めることもあることから,特にCrohn病との鑑別が重要である.また,びまん性粘膜肥厚や潰瘍を伴う粘膜浮腫などの多彩な粘膜異常を伴うことが多いため,微細な粘膜病変に着目することが重要である.

大腸DLBCL—大腸癌との鑑別を中心に

著者: 池上幸治 ,   蔵原晃一 ,   大城由美 ,   清森亮祐 ,   原裕一 ,   江頭信二郎 ,   水江龍太郎 ,   南川容子 ,   田中雄志 ,   南一仁

ページ範囲:P.941 - P.947

要旨●大腸DLBCLは潰瘍型を呈するものが多く,中でも狭窄型の症例は大腸癌との鑑別が問題となることがある.大腸DLBCLと大腸癌の鑑別には検体検査所見においては腫瘍マーカー,造影CT所見では腫瘍内貫通血管所見が有用である.X線,内視鏡的には周堤様隆起や潰瘍の形状や壁伸展性,拡大内視鏡所見では上皮性変化を疑うような表面微細構造の異常や血管走行異常の有無により鑑別可能なことが多い.本稿では辺縁に腺腫性ポリープがありX線造影所見で大腸癌との鑑別が問題となった症例と,狭窄のため通常内視鏡検査による潰瘍部の評価が困難でX線造影所見が診断に有用であった症例を提示し,進行大腸癌との鑑別診断について言及した.

直腸MALTリンパ腫—鑑別のポイントを中心に

著者: 原健三 ,   高松学 ,   十倉淳紀 ,   鈴木桂悟 ,   安江千尋 ,   井出大資 ,   千野晶子 ,   五十嵐正広 ,   斎藤彰一 ,   河内洋

ページ範囲:P.949 - P.954

要旨●直腸MALTリンパ腫は悪性リンパ腫の消化管原発性で,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と同様に多くみられる疾患である.直腸に発生する腸管非上皮性腫瘍は鑑別疾患が多く,しばしば診断に難渋する.本稿では,直腸における非上皮性腫瘍の鑑別疾患を挙げ,またそれぞれの画像を提示しながら,病理組織学的所見,超音波内視鏡所見を含めて鑑別のポイントを中心に直腸MALTリンパ腫の診断アプローチを解説する.

早期胃癌研究会症例

H. pylori既感染者に生じた腺窩上皮型胃癌の1例

著者: 堀瞳 ,   小野洋嗣 ,   九嶋亮治 ,   松井佐織 ,   渡辺明彦 ,   阿南隆洋 ,   藤田光一 ,   北村泰明 ,   平野仁崇 ,   渡邉幸太郎 ,   松岡里紗 ,   平海優香 ,   伊藤友佳 ,   髙橋京佑 ,   近藤和也 ,   稲葉真由美

ページ範囲:P.955 - P.961

要旨●患者は80歳代,男性.胆管炎の治療時に,胃内に隆起性病変を認め精査となった.通常観察では萎縮粘膜を背景に胃体上部前壁に径30mmの粗大な隆起性病変を認め,色素撒布観察で表面は乳頭状構造を呈した.NBI拡大観察では病変内部の微小血管構築像は軽度の口径不同を認め,胃型腺腫(幽門腺腺腫)を疑いESDを施行した.切除標本の病理組織学的検索では,腺窩上皮に類似する細胞異型に乏しい腺管の乳頭状増殖を認め,腫瘍の大部分はMUC5AC陽性で,MUC6は背景粘膜のみ陽性であった.病理組織学的所見よりHelicobacter pylori既感染者に生じた腺窩上皮型胃癌(WHO分類ではfoveolar-type adenoma)の診断に至った.

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目次

ページ範囲:P.839 - P.839

欧文目次

ページ範囲:P.840 - P.840

バックナンバー・定期購読のご案内

ページ範囲:P.838 - P.838

早期胃癌研究会 症例募集

ページ範囲:P.861 - P.861

「今月の症例」症例募集

ページ範囲:P.927 - P.927

次号予告

ページ範囲:P.964 - P.964

編集後記

著者: 松田圭二

ページ範囲:P.965 - P.965

 本号ではリンパ増殖性疾患との名称をテーマに取り上げているが,本編集後記ではリンパ腫という言葉を用いること,私見が含まれていること,図を使用することを平にご容赦いただきたい.
 「胃と腸」誌では,リンパ腫を特集する頻度がかつてより減少しており,1980年代で「胃と腸」がリンパ腫を特集したのは6回,1990年代で6回,2000年代は5回であったが,2010年以降はわずか1回のみと急減している.

奥付

ページ範囲:P.966 - P.966

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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