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文献詳細

雑誌文献

胃と腸59巻2号

2024年02月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

詳細な画像所見と遺伝子解析結果が得られた直腸の腺腫と腺癌の衝突腫瘍の1例

著者: 近藤雅浩1 川崎啓祐1 川床慎一郎12 水江龍太郎3 長末智寛3 松野雄一3 梅野淳嗣3 森山智彦14 谷口義章2 孝橋賢一5 山田峻6 菅井有6 鳥巣剛弘1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 2九州大学大学院医学研究院形態機能病理学 3松山赤十字病院胃腸センター 4九州大学病院国際医療部 5大阪公立大学診断病理・病理病態学 6岩手医科大学医学部病理診断学講座

ページ範囲:P.259 - P.268

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要旨●患者は70歳代,男性.注腸X線造影検査や大腸内視鏡検査では下部直腸に中心に陥凹を伴った丈の低い隆起性病変を認め,病変右側には一段丈の高い小隆起を伴っていた.NBIや色素拡大観察では病変の大部分を占める丈の低い隆起部で血管や構造不整が目立ち腺癌を疑い,病変右側の小隆起部では血管や構造不整が目立たず腺腫を疑った.一部粘膜下層(SM)浅層浸潤の可能性もあったが,全体的に粘膜内病変と診断し内視鏡的粘膜下層剝離術を施行した.病理組織学的には一部でSM浅層浸潤(400μm)を認めたが大部分が粘膜内にとどまる高分化管状腺癌で,右側の小隆起は低異型度管状腺腫であった.境界部では内視鏡的に両者を明瞭に区別することが可能で,また分子生物学的所見でも腺腫成分のみでNRAS,APCの遺伝子変異を認めたことから,腺腫と腺癌の衝突腫瘍と診断した.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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