胃と腸59巻3号

2024年03月発行

今月の主題 上皮下発育を呈する食道病変の診断 主題症例

特殊型食道癌（類基底細胞扁平上皮癌）

著者： 川田研郎¹ 伊藤崇² 春木茂男³ 藤原尚志³ 小郷泰一³ 坂野正佳³ 奥野圭祐³ 谷岡利朗³ 徳永正則³ 絹笠祐介³

所属機関： ¹東京医科歯科大学病院光学医療診療部 ²東京医科歯科大学病院人体病理学 ³東京医科歯科大学病院消化管外科学

ページ範囲：P.367 - P.373

要旨●患者は70歳代，男性．胸部中部食道に丈の低い隆起と周囲の上皮内進展あり，生検で扁平上皮癌の診断，内視鏡検査にてMt，Type 0-IIc＋“0-IIa”，cT1a-MM/T1b-SM1の診断で精査から12日目にESDを予定した．治療時，隆起部が急速に増大し0-Is型に変化していた．拡大観察では隆起部に円形の無血管野を取り囲むように太く引き延ばされた異常血管を認めた．病理組織学的には隆起部は，N/C比の大きい腫瘍細胞が中型〜大型の胞巣を形成し下方進展する像がみられ，類基底細胞癌の診断であった．周囲の上皮内進展部は扁平上皮癌であった．静脈腫瘍栓があり，最終病理診断はpT1b-SM2，ly0，v1，pVM1であった．追加手術を行ったが，ESD切除部に癌遺残はなく，リンパ節転移もなかった．術後補助療法を行わず8年経過し，追加治療なしで無再発生存中である．

参考文献

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