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文献詳細

雑誌文献

胃と腸59巻3号

2024年03月発行

今月の主題 上皮下発育を呈する食道病変の診断

主題症例

食道神経内分泌腫瘍(NET/NEC)の1例

著者: 高橋亜紀子1 小山恒男1 宮田佳典2 塩澤哲3

所属機関: 1佐久医療センター内視鏡内科 2佐久医療センター腫瘍内科 3佐久医療センター臨床病理部

ページ範囲:P.374 - P.381

文献概要

要旨●患者は60歳代,男性.白色光観察にて,切歯から30cm右壁に,発赤調の軟らかいSMT(submucosal tumor)様隆起を認めた.表面は平滑で光沢があり,最表層は非腫瘍性上皮と診断した.NBI拡大観察にて,JES-Type B血管は確認されず,EUSでは腫瘍は粘膜下層を主座とするhyperechoic lesionであった.深達度T1bの特殊型食道癌を疑い,頂部より生検を採取しNEC(neuroendocrine carcinoma)と診断された.CT,EUSにて明らかなリンパ節転移は認められず,T1b,N0,M0,Stage Iと診断した.標準的治療は食道亜全摘術であることを説明したが,本人の希望にてESD(endoscopic submucosal dissection)+CRT(chemoradiotherapy)が選択された.ESD標本の病理組織像では,表面は非腫瘍性上皮に覆われたSMT様構造で,腫瘍は粘膜固有層を主座とし,中央部で粘膜下層へ浸潤していた.強拡大像では,角化や腺管構造を伴わない小型の腫瘍細胞が密に増生しており,Ki-67 index 90%であった.またD2-40でリンパ管侵襲を認め,最終診断はneuroendocrine carcinoma,T1bSM2(2,000μm),ly1(D2-40),v0,HM0,VM0,0-I type,10×10mmであった.ESD後に再度造影CTを施行したところ,106recRの腫大を認め,T1N1M0,Stage IIと診断した.追加CRTを施行し,7年経過しCR(complete response)が継続している.上皮下発育を呈する食道病変の一つとして,食道神経内分泌細胞腫瘍が挙げられる.上皮直下まで腫瘍塊が圧排性に進展している拡大所見は特徴の一つであり,同部位を適格に生検することで確定診断をつけることができる.

参考文献

1)日本食道学会(編).臨床・病理 食道癌取扱い規約,第12版.金原出版,2022
2)海崎泰治.上部消化管—カルチノイド腫瘍・内分泌細胞癌.胃と腸 55:450-454, 2020
3)Klimstra D, Klöppel G, La Rosa S, et al. Classification of neuroendocrine neoplasms of the digestive system. In the WHO Classification of Tumours Editorial Board(eds). WHO Classification of Tumours, Digestive System Tumours, 5th ed. IARC press, Lyon, pp 16-21, 2019
4)岩坪太郎,石原立,北村昌紀,他.食道神経内分泌細胞腫瘍の内視鏡診断.胃と腸 54:1399-1408, 2019
5)Watanabe M, Toh Y, Ishihara R, et al. Comprehensive registry of esophageal cancer in Japan, 2015. Esophagus 20:1-28, 2023
6)小山恒男,高橋亜紀子,宮田佳典,他.特徴的な内視鏡所見を呈し,ESD+CRTが奏効した表在型食道内分泌細胞癌の1例.胃と腸 52:461-468, 2017
7)日本肺癌学会(編).肺癌診療ガイドライン2016年版.金原出版,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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