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文献詳細

雑誌文献

胃と腸59巻7号

2024年07月発行

文献概要

今月の主題 虚血性腸病変を整理する 序説

虚血性腸病変を整理する

著者: 江﨑幹宏1

所属機関: 1佐賀大学医学部内科学講座消化器内科

ページ範囲:P.915 - P.917

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はじめに
 本誌では,これまで1993年(第28巻9号「虚血性腸病変の新しい捉え方」)と2013年(第48巻12号「虚血性腸病変」)に虚血性腸病変に関する特集が組まれている.過去2号の特集において“虚血性腸炎”ではなく“虚血性腸病変”という用語を用いたのは,Boleyら1),Marstonら2)が提唱した“ischaemic colitis”を直訳した場合の“虚血性大腸炎”と区別することや,血流障害に起因して発生する虚血性・壊死性変化に対して“腸炎”といった名称を当てはめるのは必ずしも適切ではないと考えられること3),血流障害が主因となって腸管に炎症を生じるさまざまな疾患を包括的に取り扱う意図があったのであろうと推察する.
 ところで,虚血性腸病変とは血流障害が主因となって腸管に炎症を生じる疾患の総称4)と定義可能であるが,全身の循環障害に起因するもの,腸間膜血管レベルあるいは腸管壁血管レベルでの循環障害に起因するもの,さらには動脈側,静脈側,あるいは両側の細小血管の障害に起因するものなど,血流障害にもさまざまなレベルのものが存在する.また,血流障害の原因も血管自体の炎症によるものや,薬剤や細菌毒素による血管攣縮惹起,放射線照射に伴う動脈内膜炎による血管壁肥厚,血管周囲の沈着物など多種多様である.加えて,虚血性腸病変の形成には,血管側因子だけでなく便秘などによる腸管内圧上昇や蠕動運動亢進などの腸管側因子が絡み合って発症する場合もある.さらには,炎症性腸疾患において組織炎症の結果生じる血管破綻も,大なり小なり腸管病変形成に関与すると考えられる.このように考えていけば,腸管障害を形成するすべての疾患が虚血性腸病変の範疇に含まれるとしても決して間違いではなく,その疾患概念は混沌としたものになってしまう.
 前回特集号から10年超を経た今回の特集号は「虚血性腸病変を整理する」ことをテーマに掲げた.Fig.1に虚血性腸病変に包括される各疾患を,障害血管部位,血管閉塞の有無,血管側因子と腸管側因子の寄与度を念頭に置きながら筆者なりに位置付けてみた.なお,今回は虚血性腸病変の疾患概念を整理することを目的としていることから,腸管炎症といった腸管側因子の結果二次的に生じた血流障害が病変形成に関与すると考えられる炎症性腸疾患は除外した.

参考文献

1)Boley SJ, Schwartz S, Lash J, et al. Reversible vascular occulusion of the colon. Surg Gynecol Obstet 116:53-60, 1963
2)Marston A, Pheils MT, Thomas ML, et al. Ischaemic colitis. Gut 7:1-15, 1966
3)多田正大,北村千都,平田学,他.虚血性腸病変の疾患概念の変遷とその取り扱い方に関する問題点.胃と腸 28:889-897, 1993
4)小林広幸.虚血性腸病変の疾患概念.胃と腸 48:1685-1688, 2013
5)Bassiouny HS. Nonocclusive mesenteric ischemia. Surg Clin North Am 77:319-326, 1997
6)鈴木修司,近藤浩史,古川顕,他.非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)の診断と治療.日腹部救急医会誌 35:177-185, 2015
7)Jennete JC, Falk RJ, Bacon PA, et al. 2012 revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides. Arthritis Rheum 65:1-11, 2013
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9)Iwashita A, Yao T, Schlemper RJ, et al. Mesenteric phlebosclerosis:a new disease entity causing ischemic colitis. Dis Colon Rectum 46:209-220, 2003
10)Lavu K, Minocha A. Mesenteric inflammatory veno-occlusive disorder:a rare entity mimicking inflammatory bowel disorder. Gastroenterology 125:236-239, 2003
11)Genta RM, Haggitt RC. Idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veins. Gastroenterology 101:533-539, 1991
12)Yamada K, Hiraki M, Tanaka T, et al. A case of idiopathic myointimal hyperplasia of the mesenteric veins presenting with small bowel obstruction. Surg Case Rep 7:17, 2021
13)Kawasaki K, Kawatoko S, Torisu T, et al. Idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veins depicted by barium enema examination, and conventional and magnifying colonoscopy. Clin J Gastroenterol 15:734-739, 2022
14)Yamada Y, Sugimoto K, Yoshizawa Y, et al. Mesenteric inflammatory veno-occlusive disease occurring during the course of ulcerative colitis:a case report. BMC Gastroenterol 18:9, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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