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文献詳細

雑誌文献

胃と腸59巻7号

2024年07月発行

文献概要

今月の主題 虚血性腸病変を整理する 主題

紫斑のないIgA血管炎と臨床診断した4例の臨床像と画像の特徴—血管炎症候群との鑑別も含めて

著者: 大川清孝12 佐野弘治1 松井佐織2 松岡里紗2 北村泰明2 藤田光一2 阿南隆洋2 渡辺明彦2 西尾昭宏3 小野洋嗣4 上田渉5 山上啓子6

所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科 2淀川キリスト教病院消化器内科 3西ノ京病院消化器内科 4おの消化器内科・内視鏡クリニック 5うえだクリニック 6大阪市立総合医療センター総合診療科

ページ範囲:P.963 - P.970

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要旨●紫斑がなくIgA血管炎の診断基準を満たさないが,消化管病変の特徴からIgA血管炎と臨床診断した4例の臨床像と画像の検討を行った.全例とも高齢男性で,関節症状や腎障害はほとんどなく,重度の消化管症状がみられた.罹患部位は小腸広範囲であり,内視鏡像は通常のIgA血管炎とは異なり広い潰瘍を示し,3例で全周性帯状潰瘍と島状粘膜残存がみられた.全例でステロイドホルモン(SH)が投与され有効であった.紫斑のないIgA血管炎の存在を知らないために,SHの投与が遅れることで手術を行うことになったり,長期入院を余儀なくされる可能性がある.紫斑のないIgA血管炎の存在を周知すること,消化管病変の特徴を含めた新しい診断基準の作成が必要と考えられる.

参考文献

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12)大川清孝,佐野弘治,末包剛久,他.腸管Behçet病・単純性潰瘍と他の炎症性腸疾患との鑑別診断.胃と腸 46:1032-1043, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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