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文献詳細

雑誌文献

胃と腸6巻11号

1971年10月発行

文献概要

一頁講座

胃粘膜表面のAH法実体顕微鏡観察―(2)びらん性胃炎

著者: 吉井隆博1

所属機関: 1日本医科大学病理学教室

ページ範囲:P.1461 - P.1461

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 びらん性胃炎という言葉は,びらんが多発し,所見として著しく目立つ場合に,胃炎の一つの修飾亜型として使うべきであって,独立疾患(entity)と見なすべきではない.肉眼およびAH法実体顕微鏡観察からびらんは次のように分類し得る.①点状,②線状,③樹枝状(図1),④類円形,⑤星形(多角形)(図2)⑥広汎地図状(図3),⑦たこいぼ(図4),⑧出血性,⑨堤尖びらん,またその分布状態から,A)幽門腺域ことに小彎部に多発する型,B)中間帯付近に多発する型,C)体部腺域に多発する型に分けられる.Aが最も多く,次いでB,Cの順である.B,Cが単独でおこることは稀で,多くの場合Aと合併しておこる.

 びらん面は図1,2,3,4のごとく,胃小溝模様(SP),胃小窩模様(FP)の不鮮明化,あるいは消失を来し,またヘマトキシリン不染巣を示すことが多い.びらん周囲の胃粘膜のFPやSPは,図1(右1/3)のごとく著しく乱れていることが多い.この部は再生した粘膜で,かつてはその範囲までびらんであったことを物語っている,多発性びらんの場合は各種びらんが多彩性に入り交って現われる.すなわち,多数の星形(多角形)びらんが散在し,その間を樹枝状びらんが連絡しているような像をしばしば見る.また図1左端のような肉眼的には点状ないし米粒大位のUl-Ⅱの小潰瘍(私はこれをmicroulcerとよんでいる)が散在し,この間を樹枝状びらんが連絡していることも多い(私はこのようなものをulcero-erosive gastritisとよんでいる),たこいぼびらんはびらん辺縁の粘膜が,炎症反応(細胞浸潤,浮腫など)によって,あるいは粘膜上皮や腺の過剰増生によって隆起したものである.図4のたこいぼは前者で,図5は後者でしかもその治ゆ像である.また前者のみによるたこいぼは消えやすいが,後者によるものは消えにくい.出血性びらんは,種々の程度の粘膜壊死と強い出血を伴う斑状,線状,地図状びらんで,塩酸ヘマチンを形成して黒褐色を呈する.だいたい,1,2週位で消失することが多い.堤尖びらんは粘膜のごく表層のみのびらんで一種の剥離性カタル性炎(desquamative catarrh)で,肉眼,内視鏡などで診断しにくいことが多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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