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文献詳細

雑誌文献

胃と腸6巻12号

1971年11月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 研究

ストレスによる胃粘膜出血の内視鏡像,病理ならびに治療

著者: 須川暢一12

所属機関: 1東大分院外科 2Wayne State University外科

ページ範囲:P.1603 - P.1610

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はじめに

 筆者は1969年7月ミシガン州デトロイトにあるWayne State Universityの外科にResearch Associateとして渡米して以来,多くのいわゆるストレスによる胃粘膜よりの出血を経験し,その内視鏡像,病理,さらに治療について研究する機会を得たので,その結果を発表したい.

 近年外傷または敗血症,さらには両者の併発後の急性胃出血の頻度は著しく増加した.この原因はショック,敗血症,呼吸不全,腎不全などの治療が進歩した結果,以前なら当然死亡したと思われる患者が生存して,胃出血を合併する場合が多くなったためと思われる.

 この研究が行なわれたDetroit General Hospitalの一般外科のEmergency Serviceでは,平均約60人の患者を収容しているが,毎週約2例の急性胃出血の新患が発生し輸血をしている.この病院ではストレスによる胃粘膜出血の頻度は消化性潰瘍,食道静脈瘤よりはるかに多く,上部消化管出血の最大原因となっている.

 わが国では上部消化管出血の原因としては,消化性潰瘍によるものが過半数を占めている(長尾59.1%1),長塚71%2),浜口54.9%3),川井61.1%4)).これに反して出血性びらんの占める頻度は長尾14.6%1),長塚7.3%2),浜口8.8%3),川井2.3%4)と少ない.出血性びらんは通常X線検査では診断できず,出血後早期内視鏡検査を施行した場合に診断されるが,上記長塚2),川井4)の数値に示されるごとく,出血後早期内視鏡検査を施行してもわが国では出血性びらんの占める頻度は少ない.これに対して欧米では,出血後早期内視鏡検査を行なった場合,上部消化管出血の中で出血性びらんの占める頻度はKatz5)によれば28%と最も多く,数多くの著者が20ないし30%6)7)8)の数値をあげている.

 通常出血性びらんの誘因として,アルコール,抗炎症剤(アスピリン,ステロイド),火傷,外傷などが挙げられるが,この研究対象は外傷または敗血症,さらには両者の併発後の上部消化管出血であり,これ以外の誘因による出血は除いてある.外傷,敗血症で入院した患者が胃出血を合併してくるので,胃出血に対する手術を行なった症例はすべて非常に重症であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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