icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸6巻2号

1971年02月発行

文献概要

今月の主題 陥凹性早期胃癌 A.陥凹性早期胃癌の問題点 綜説

胃の潰瘍と癌の因果律―陥凹性早期胃癌の問題点

著者: 中村恭一1 菅野晴夫1 高木国夫2 熊倉賢二3

所属機関: 1癌研究会癌研究所病理部 2癌研究会付属病院外科 3癌研究会付属病院内科

ページ範囲:P.145 - P.156

文献購入ページに移動
 従来から,胃癌の発生母地として潰瘍・ポリープ・慢性胃炎が重要視されていて,これら良性病変と癌との関係が論じられています.特に,胃の潰瘍と癌の頻度が高いわが国では,浅い潰瘍の存在も論じられています.この潰瘍一癌に関する多くの論文をみますと,潰瘍の癌化の頻度または全胃癌に占める潰瘍癌の頻度には,かなりの“ばらつき”があって一定の傾向を把握することができません.潰瘍癌の頻度にっいては,Newcomb10)の論文にみられるように,3.5~100%の拡がりを示しています.また,わが国では,頻度のばらつきが32~79%を示しています4)5)7)11)18)19)

 このように,潰瘍癌の頻度が広範囲に分散していることは,潰瘍癌と判定する組織学的基準の差によるものであり,しかも,その差は基本的な所見の違いではないと思われます.潰瘍癌の組織学的判定基準によって,潰瘍癌の頻度に広範な”ばらっき”をもたらすような不条理さが良性潰瘍と癌との間に存在することに疑問が生じます.もし良性潰瘍と癌の問に密接な因果関係が存在するとすれば,たとえ潰瘍癌の判定基準に多少の差があっても,潰瘍癌の頻度にはある近似がみられてしかるべきと考えられるからです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら