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文献詳細

雑誌文献

胃と腸6巻3号

1971年03月発行

今月の主題 早期胃癌と紛らわしい病変

主題

早期胃癌と紛らわしい病変の生検診断―特に陥凹性病変について

著者: 倉俣英夫1 宇南山史郎1 衛藤繁男1 坪井晟1 風戸計民1

所属機関: 1神奈川県立成人病センター

ページ範囲:P.299 - P.310

文献概要

はじめに

 近年,早期胃癌の症例も全国的に各施設が数多くの経験を持つようになり,胃内視鏡診断学も進み,胃生検診断が加わるに及んで,早期胃癌,あるいは進行胃癌の表面微細な変化を含めて,悪性様相を決定づける因子が解明され,確立されてきた.しかしながら,内視鏡的には,たとえば,Ⅱcの浅い陥凹を診断するのに,その全周が明らかに追求できるという写真は筆者らの経験で驚くほど少ない.集中粘膜ひだ先端の性状においても同様で,肥大は目立っても,その先端における癌浸潤特有の蚕蝕像,不規則なけずれなどの微細な特長を描出し得た症例も多くはない.これらは胃液などの液性介在とか,撮影態度,空気量の多少,体位変換の有無などの条件が大きな原因である.

 これらの条件を考慮し,きめ細かな撮影が行なわれて初めて病変部の微細所見の描出も可能となってくるが,普通,多数の患者を扱う一般外来では,いつも満足し得る写真が得られるとは限らない.もちろん,全体像,経過像,さらにはレントゲン検査を含めて,総合的な結果から理論的には判定を下し得ても,実際の内視鏡診断の立揚では困難なことが多く,その場合には胃生検がその役目を果してきた.

 最近では,Ⅱb型早期胃癌の存在を疑うことをも含めて,胃内視鏡ではあらゆる映像に対し一応悪性の存在を疑わざるを得ない.とくに以前に,良性と思い込んで経過を追求しているうちに,胃生検を行なってみたら,癌が証明されたという苦い経験を持っていれば,次に以通った病変像に出会った時,良性よりは悪性へとover readingしてしまうのはむしろ当然であろう.とは言っても,それだけの理由で,良性のものをたびたび悪性として処置することは,当然のことながら許されるべきではない.良性病変で強く悪性を疑わせた所見を悪性病変のそれと対比し,その意味の違いを反省して,今後,良悪性鑑別の手がかりの一つとすることは大変有意義なことと思われる.筆者は,過去に経験した内視鏡像で,良悪性ともに大変よく似た症例を比較して,両方の違いを出そうと試みた.症例は,なるべく多くを供覧するようにした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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