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文献詳細

雑誌文献

胃と腸6巻7号

1971年06月発行

文献概要

今月の主題 腸上皮化生 主題

腸上皮化生の内視鏡診断

著者: 横山泉1 竹本忠良1 木村健2

所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター 2東京大学医学部第三内科

ページ範囲:P.869 - P.874

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 慢性胃炎の歴史をふり返えると新しい有力な検査法が出現するたびに,その臨床的意義づけに大きな振幅や動揺をくり返しながら今日に至っているといえよう.胃炎の臨床診断学にもっとも大きく貢献したのはSchindlerの胃鏡検査法であったことはあまりによく知られたことであるが,内視鏡および生検法に一段と飛躍的な進歩がみられた現在の時点からふり返ってみると,旧い検査法は当時はかなり完全なものとみなされても,大きな方法論的制約をもったものだということが検査法の進歩とともに曝露されている.その点では現在の内視鏡,生検法でも同様で,只今不備な点として改良に努力が続けられている諸問題がいっきょに解決するような新しい診断武器が完成してみれば,同様なことがいわれるであろう.

 従来,腸上皮化生の研究は主に切除胃組織の検索にゆだねられていたが,かつて胃カメラの発展期において,1959年崎田ら1)は粘膜の変色,粘膜の緑,黄灰白色などの変色は腸上皮化生を有する萎縮性胃炎にしばしばみられる特徴的所見であるとのべ,Schindler2)の三型分類を改めた独自の分類を提唱し,胃炎の内視鏡診断学に新しい息吹を導入した.しかしその後多くの研究者が検討した結果,腸上皮化生に起因すると考えられた胃カメラ所見と腸上皮化生の有無,程度とが必ずしも一致しないことがわかり,腸上皮化生を内視鏡的に診断することに対して多くのものは否定的な見解をもち,いつのまにか胃カメラ分類はSchindler分類に逆行した.しかし,最近では竹添3)は主として胃カメラを用い灰白色調の目立つものの87%に腸上皮化生を認めるとのべており,以前の批判的見解が再検討されつつあり,また腸上皮化生のある種のタイプが内視鏡で診断できるようになってきた現在,崎田らが当時粘膜の色調の変化と腸上皮化生との関係に着目し,大胆に新しい分類法を提唱したことにあらためて敬意を表するものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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