文献詳細
文献概要
今月の主題 腸上皮化生 主題
腸上皮化生のパターン―特に実体顕微鏡的観察
著者: 吉井隆博1
所属機関: 1日本医科大学病理学教室
ページ範囲:P.881 - P.888
文献購入ページに移動 腸上皮化生は慢性胃炎に随伴し,年齢的には30歳頃から段々と現われ,40歳台に入って急激に増強する.昔は先天的発生異常として胃粘膜内に異所的に生じた腸粘膜の島と考えた学者もあったが,これは明らかに再生上皮の分化の方向の変化として現われる間接的化生である.幽門腺領域は年齢と共に拡大してゆくが,腸上皮化生もこれに伴って拡大してゆく.化生上皮は時に過形成を示し,あるいは異形化する.したがって胃癌の前段階的変化と見なすものもあるが,一方では発癌とは無関係で,正常胃粘膜上皮より安定性の高い丈夫な細胞で,再生時に現われる合目的性化生と見る者もある.化生がおこると,時に,かなり特有な胃小区の変化,色調の変化を示すことがあり,粘膜の所見を多彩にする.かつては腸上皮化生は単に病理学者の興味の対象にすぎなかったが,近年は胃粘膜のX線,内視鏡的観察がますますこまかくなり,腸上皮化生の質的量的診断にまで努力が払われるようになってきた.しかし現在,X線的および内視鏡的に診断し得るのは,ごく限られた型の腸上皮化生のみである.ここに筆者が今まで観察しえた腸上皮化生の種々相を分類し,その概略を説明し,いかなる型のものが診断可能で,いかなる型のものが診断不可能かを述べ,将来,いかなる手段を構ずれば診断不可能であった型も診断可能になるかの予想に言及したい.
掲載誌情報