今月の主題 食道炎と食道静脈瘤
主題
食道静脈瘤の診断―内視鏡診断を中心として
著者:
瀬底正彦1
成毛正1
川上明彦1
太田安英1
春日井清1
常岡健二1
所属機関:
1日本医科大学第3内科
ページ範囲:P.1313 - P.1320
文献購入ページに移動
上部消化管出血に占める食道静脈瘤の意義は大きく,吐血例では,まず食道静脈瘤出血と他の潰瘍性出血との鑑別を考慮するのが常である.さらに,肝硬変症を主とする門脈圧亢進症に伴なう食道静脈瘤では,その破綻による出血が致命的となる場合が多く,したがって,食道静脈瘤の有無を明確にすることが基礎疾患の予後判定上および治療上にも大切である.ところで,従来食道静脈瘤を診断するにさいして,我国では主としてレントゲン検査にたよるのみで,内視鏡検査による診断は静脈瘤損傷による出血の危険性を考慮しすぎて,あまり行なわれなかった嫌いがある.しかし,最近ファイバースコープによる内視鏡検査の普及と共に,優秀なファイバー食道鏡も製作され,これを用いての食道内視鏡検査が容易となるにつれて,最近では食道静脈瘤に対してもファイバー内視鏡検査が普及しつつある.すでに我々も第12回日本内視鏡学会総会(昭和45年2月)でのシンポジウム「食道病変の内視鏡」において,“食道静脈瘤の内視鏡診断の限界”をテーマとし,ファイバー食道鏡による食道静脈瘤の観察は容易かつ安全であり,しかもX線診断に比べて診断能が高く,静脈瘤の疑われる疾患のすべてに対して行なう必要があることを主張したところである1).
また今春の第58回日本消化器病学会総会・第14回日本内視鏡学会総会共催の国際セミナーにおいてA. E. Dagradiは“Endoscopy of esophageal varices”と題し,約20年間にわたる研究結果から,内視鏡診断の価値を高く評価すると共に,肝硬変症に対しては食道鏡をルーチンに使用するとしている.