今月の主題 食道炎と食道静脈瘤
主題
食道静脈瘤の治療
著者:
杉浦光雄1
島文夫1
市原荘六1
二川俊二1
石田正統1
所属機関:
1東京大学医学部第2外科
ページ範囲:P.1321 - P.1331
文献購入ページに移動
門脈圧亢進症は1936年,Presbyterian Hospital一派1)から発表されて以来,病態生理および治療に関して永年の追究が行なわれており,外科治療面での画期的な報告はWhipple2),Blakemore3)らの門脈下大静脈吻合術による門脈減圧手術である.この報告以来,欧米は勿論,本邦でも血管吻合術による門脈減圧手術は門脈下大静脈吻合術,脾腎静脈吻合術として外科的治療の標準術式として取上げられ今日に到っている.しかし門脈下大静脈吻合術も脾腎静脈吻合術でも術後肝性脳症の発生が多くみられ,血管吻合術に関する反省の報告4)~6)もしばしばみられるに到っている.本邦では術後肝性脳症の多発の傾向から肝硬変症に対しては門脈下大静脈吻合術は勿論のこと,脾腎静脈吻合術でもこれを施行するにあたって遅疑逡巡しているのが現況であり,むしろ選択的門脈減圧手術,selective portal decompression7)~9)と直達手術としての食道離断術10)11)が取上げられ,別に直達手術としてのgastroesophageal decongestion12)13)や胃上部切除術14)が報告され,これら手術手技に関する検討が行なわれつつあり,それぞれ良好な結果が報告されている.
本論文では食道静脈瘤に対する治療を中心として保存的治療,血管吻合術,直達手術,緊急手術の各項について述べる.