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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻10号

1972年10月発行

文献概要

症例

早期十二指腸癌―症例報告および文献的考察

著者: 三戸康郎1 土屋定敏2 寺岡広昭2 瓜生昭五3 伊藤慈秀4

所属機関: 1九州大学医学部第2外科 2松山赤十字病院外科 3松山赤十字病院内科 4川崎医科大学病理学教室

ページ範囲:P.1377 - P.1383

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 原発性十二指腸癌は比較的まれな疾患であり,全剖検例の中,欧米ではMateer1)らによれば0.06~0.2%を占め,本邦では石原,長与3)らの0.1~0.2%という報告がある(表1).最近臨床的にも,原発性十二指腸癌の手術成功例の報告が散見されるようになったが,これらはすべて漿膜浸潤高度な進行癌であり,この部分の早期癌の報告には未だ接しないようである.われわれは最近十二指腸水平部末端に発生した病変で,切除標本の組織所見から粘膜層に限局した早期十二指腸癌と診断された貴重な一症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

症例

 患 者:H. K. 67歳,女性.

 主 訴:上腹部とう痛,胃部膨満感,嘔吐.

 家族歴:特記すべきことはない.

 既往歴:1年前から膝関節ロイマチス,下肢静脈血栓症あり.

 現病歴:昭和46年6月上旬より,軽い上腹部痛,食後の胃部膨満感をきたすようになったので,6月中旬当外科を受診,胃X線検査および胃カメラが施行されたが,胃幽門部の胃周囲炎によるくびれを指摘されたのみで,他に特に異常は認められなかった.しかし患者はその後も上腹部痛があり,6月末頃から朝食べたものを夕方嘔吐するようになったので,7月上旬当内科を受診し,貧血を指摘され,精密検査をすすめられて入院した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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