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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻11号

1972年11月発行

文献概要

今月の主題 十二指腸乳頭部病変 主題

十二指腸乳頭部病変の内視鏡診断

著者: 小林正文1 岡部悠1 田口武人1 太田安英1 常岡健二1

所属機関: 1日本医科大学常岡内科

ページ範囲:P.1467 - P.1472

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 十二指腸において,Vater乳頭部は,十二指腸球部についで病変の多い部位であり,特に膵胆道系との関連において重要である.内視鏡的にVater乳頭を観察した記録は,1966年Watoson1)らによるものが当初である.本邦においても,十二指腸鏡開発当初より,乳頭観察は大きな目標の一つであった.そのため,乳頭の観察には意欲的な努力が払われて来た.そして今日,ごく特殊なものを除けば,乳頭観察は全例に可能となった.また,観察のみではなく,生検,逆行性膵胆道造影が可能となり,乳頭部領域,膵胆道疾患の診断に極めて重要な情報を提供してくれる検査法として,臨床的にも次第に評価され,その位置が確立されつつある.

名称

 Vater乳頭部の名称は,解剖学の成書においても多少の異同がみられ,臨床的文献においてもその使い方は統一されていない.内視鏡学的名称もそれに準じており,名称の統一が提唱されてきたが,今だ実現されるに至っていない.解剖学的にも,十二指腸縦皺という名称が,図1①の部分をさしているもの(Spalteholz2),Brous3),金子4)ら),③の部分をさしているもの(Beuninghoff,Goerttler5)),②の部分も乳頭と呼ばず十二指腸縦皺と呼んでいるものもある(Pernkopf6)),また口側から十二指腸縦皺,Vater乳頭,小帯と呼んでいるものもある(Hirsch7),Brausら).臨床的には膵胆道系を主体に考え,その開口部として胆道,膵側からながめる姿勢が底流にあるようである.内視鏡的にも,最初に乳頭開口部の開閉運動を観察記録したWatosonはpapillaという名称を用いずAmpullaという名称を用いている.大井ら8)は内視鏡的立場から乳頭部の詳細な名称を提唱しているので,それを参考に図1に本稿で用いる名称を示す.ここで最も問題になるのは①の部分,および乳頭部という名称である.今日,内視鏡的に部分を区別して観察することは可能であり,また所見も分けて観察することが大切であるとの見解は一致している.大井は,②および③の部分を乳頭部としており,またBoyden9)も②と③を十二指腸縦皺とし,②を乳頭,③を小帯としてこれらを1単位と考えているようである.しかし中沢10)らも指摘している如く,①および②はVaterian systemを被う十二指腸粘膜で,臨床的にも病理学的にも切り離すことのできない1つの単位であると考える.小帯に関しては,今日まだ生理,病理学的な意味付けは充分でなく,臨床的に問題にされることも少ないので,①を十二指腸縦皺,②を乳頭(Vater乳頭,大十二指腸乳頭)両者を合せて乳頭部と呼ぶのが最も簡潔であると考える.細部にわたる名称に関しては大井らの提唱が,次第に一般的に用いられてきているようである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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