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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻12号

1972年12月発行

文献概要

症例

二組の姉妹にみられた非特異性原発性小腸潰瘍症の検討

著者: 小山真1 曽我淳1 武藤輝一1

所属機関: 1新潟大学医学部第1外科教室

ページ範囲:P.1643 - P.1648

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 最近の15年間にわれわれの教室で手術をうけた17例の非特異性小腸潰瘍患者のうち8例が組織学的に非特異性原発性多発性慢性小腸潰瘍と診断された(表1).このうちに2組の姉妹が含まれていたことは誠に興味ある点であったが,いずれにせよ他の4例と臨床的,組織学的にもほとんど差異を認めなかったので,この2組の姉妹の症例を述べ,本症に対するわれわれの考えをまとめてみたい.なおこれらの症例についてはすでに度々報告1)しているので症例報告とは少し異るが以下のようにまとめてみた.(これらの症例は本年の消化器病学会総会のシンポジウムで一部報告した)

症例

 表1の4,5と6,7がそれぞれ姉妹である.症例4,5の姉(症例4)は12歳で貧血と浮腫をもって発病.幾つかの病院で種々の診断の下に治療をうけたが次第に増悪し22歳で本学第1内科へ入院した.蛋白漏出とレ線上で小腸下部に多発性狭窄を認め蛋白漏出性胃腸症として当科で手術をうけた.即ち図1に見る如く多発性狭窄を含む回腸130cmの切除を行った.表2は症例4,5の臨床検査成績の推移を示したものであるが,術後2カ月目に一旦血清蛋白は増加し,貧血,糞便中潜血も改善し,体重も増加した.しかしこの頃すでに蛋白漏出が認められており病変の残存,または再発が疑われる所見であった.その後に結婚したが,5年後(28歳)妊娠中にも拘らず低蛋白血症による浮腫と貧血を訴えて来院,蛋白漏出,血清アルブミン交替率の亢進,糞便中潜血の増悪を認め妊娠の継続と分娩が困難と考えられたので再手術が行われた.その際図1の如く前回とほとんど同様の所見が吻合部の上方にみられ約90cmの切除(残存小腸170

cm)を行い,2カ月後には全身状態,検査成績(表2)も改善し,その後無事出産することができた.しかし,2年後の昨年夏再び貧血,浮腫,無月経,下痢を主訴として来院,再発と診断され当科へ入院した.入院時の検査成績は表2,3に挙げてあるが,低蛋白血症,貧血と比較的軽度の蛋白漏出を認め,レ線でも本症再発が確認された.しかし,小腸広範囲切除によると考えられる蛋白,脂肪の吸収障害が認められたため,これ以上の腸管切除がはばかられたので輸血,輸血漿,栄養補液により全身状態の改善をみた.しかし輸血,輸液を中止すると間もなく検査所見の増悪をみ,更に吸収不良が認められたので試みに中鎖脂肪(MCT)の経口投与を行ってみたところ,幸いにもMC・8 250~300g/日(乳糖不耐症状を呈し3g/日のlactase剤の同時投与を要した)の経口投与で改善をみ約2週間後に退院せしめることができた.退院後今日まで200~250g/日のMC・8と9錠/日のサラゾピリン,2錠/日のフェログラジュメットの経口投与で一応良好に経過している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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