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書評「レントゲン撮影法」
著者: 榊原聰彦1
所属機関: 1日本大学医学部放射線医学教室
ページ範囲:P.294 - P.294
文献購入ページに移動 努力作であり,これをものされた両氏にまず深い敬意を表したい.通読するに,表題のごとく,X線写真の基礎にはじまって撮影全般にわたりあまねく述べられている.就中,消化器の項には力が入っており,全体の1/4にあたる100頁をさいてこれにあて,検査技術の細部にまで立ち入って理論に基き縷々説明を加えているが,その間著者永年の研鑚の結果が各所に光彩を放っており,大きな特色であるといえよう.最近わが国において消化器X線診断が重視され,われわれの日常作業中大きな比率を占めるに至っていることについては改めてのべるまでもなかろうがその中心は在来の透視からフィルム読影にうつっており,したがって読影に値するフィルムを作り出すことが正しい診断の第一歩であるところから,細かな病変までも明確に表現することについて撮影者の払う苦心は誠に大きい.この点本書の説明は懇切丁寧,かゆいところに手が届くようであり,一読後撮影されたフィルムのできばえは,それ以前に比べ一段と進歩の跡を示すことであろう.誠に時宜に叶った本書の出現と申さざるをえない.また基礎部門においても同じく綿密な解説が行なわれていて図や写真などを多用し読者の理解を容易ならしめている点効果的であり,よい写真を作るためにはまず基礎づくりからと考える両氏の真意がうかがわれ,私も双手をあげてこの企てに賛成申し上げたい.しかし,反面,書物があまり厖大になるのを避けるための余儀ない措置であったかとは思うが,骨格系撮影法の記述は消化器の部のそれに比べてやや簡単であり,今少し説明を加えられてもよく,たとえば各部位ごとの出来上りフィルムは,それぞれどのようなものであるべきかなど,具体的に指されれば,錦上さらに花を添えることになったのではなかろうか.なお本書全般を通じて撮影対象が成人に限られているが,乳幼児の場合の撮影方法や条件などについてもふれてほしかった,次版には是非御加筆をいただきたい.また解剖学的記述の部にも,用語その他の点につき若干の注文なしとしないが,しかしとにかく力作であり,このようなユニークな撮影指導書が出現したことを心から歓迎し,読後感をのべさせていただくとともに,各位の御一読をお奨めする次第である.
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