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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻5号

1972年05月発行

今月の主題 悪性サイクル

主題

進行胃癌の悪性サイクル

著者: 堀之内幸士1 八尾恒良2 古賀安彦2 岡田安浩2 冨岡武2 岡部治弥3 広門一孝3 三井久三3 為近義夫3 新関寛3 安部学1

所属機関: 1福岡赤十字病院 2九州大学医学部第2内科 3北里大学内科

ページ範囲:P.583 - P.592

文献概要

 胃癌に於いては,癌巣内の潰瘍でも良性潰瘍と同様に縮小・治療・再発をくりかえすことのあることは,欧米では,すでに古くから知られていたが,当時はあくまでも,きわめてまれな,めずらしい現象として理解されていたようである.

 また,わが国に於いても,潰瘍縮小の観察された胃癌例を筆者らが「悪性潰瘍の表面変化」と題して報告を行なった昭和40年4月頃までは,かかる現象も,非常にまれな奇異なできごととしてしか受けとられていなかったようである.しかしながら近年わが国に於ける胃X線ならびに胃内視鏡検査の著しい普及により,次第にこのような症例が数多く,しかも明瞭に観察されるようになって来た.癌巣内潰瘍でも縮小,瘢痕化することがあるというこの事実は,われわれ臨床医にとっては,胃の潰瘍性病変の診断にあたって潰瘍が縮小したからといって決して油断してはならないという診断上の警告として受け入れられたが,いっぽう,当時潰瘍癌の判定規準をめぐって論争中の病理学者の間では特に潰瘍底の再生粘膜の解釈に非常に重要な情報を提供し,大きな波紋を投げかけたことは周知のごとくである.そして昭和40年村上は胃癌病巣内潰瘍の,このような現象を良性潰瘍に於けるライフサイクルに対応して悪性サイクルと呼ぶことを提唱したが,以来悪性サイクルに関する報告は数多くみられ,今日に於いては陥凹性早期胃癌で悪性サイクルの認められることは常識として考えられるようになっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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