icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻5号

1972年05月発行

文献概要

一頁講座

胃噴門部の内視鏡診断―(1)観察法

著者: 小林世美1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.623 - P.623

文献購入ページに移動
 1.食道ファイバースコープによる胃噴門部の観察

 胃噴門部とは胃の近位端,食道,胃粘膜境界部に接する部分を呼称する.この部位を観察するに,通常食道ファイバースコープが用いられる.食道ファイバースコープを食道に挿入し,約30cmの位置に達すると,管状に見える食道の下端に,放射状に閉鎖している噴門部が見える,更に進むと,約40cmの位置に,食道・胃粘膜境界部を見,殆んど同時に噴門部が開いて,胃内腔が前方に見える.この位置は,身長の如何に拘ず,38~42cmの深さにあるのが正常で,身長の高い米国人でも殆んどこの範囲内にあり,日本人との差は認められない.食道・胃粘膜境界部は,横隔膜裂孔(Diaphragmatic hiatusまたはEsophageal hiatus)に近接していて,胃内へ開口する少し手前に見える場合と,開口した瞬間に見える場合がある.その境界部は,通常明瞭である.何故なら食道粘膜は白っぽく,主として縦走する毛細血管が容易に認められるに反し,胃噴門部の粘膜は橙赤色で,その色調の差異が境界部を明瞭に映しだす.境界線は,通常鋸歯状を呈している.検査時この粘膜境界部の位置を,門歯からの距離で記載する.正常者では,境界部の生理的狭窄がHiatusにほぼ一致しているが,この位置が異常に異なると,粘膜境界部とHiatusの2つの狭窄部を認め,Hiatus Hernia(横隔膜裂孔ヘルニア)が存在することになる.これらの狭窄部は,いわゆる生理的狭窄であり内視鏡の挿入により柔軟に対称的に開き,胃内挿入を許す.何か器質的な病変が存在する場合は挿入を妨げたり,非対称的な開き方をする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?