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文献概要
今月の主題 胃癌浸潤程度の診断 主題
病理からみた胃癌の深達度診断
著者: 佐野量造1 下田忠和1
所属機関: 1国立がんセンター病理部
ページ範囲:P.753 - P.761
文献購入ページに移動 早期胃癌の質的診断がかなり一般的となった現在,つぎに残こされたものは癌の粘膜内拡がりの範囲と,癌が胃壁のどの程度の深かさまで達しているか,すなわち癌の深達度診断に関する問題であろう.前者は胃切除範囲の決定にあたって是非知らねばならぬことである.また後者は胃癌であるとすればそれが早期癌であるか進行癌であるか,また早期癌とすれば粘膜内の癌が粘膜下のものであるかを術前に推測することができたとすればリンパ節廓清の範囲および肝転移の有無についてより以上の慎重を期することができる.なぜならば粘膜内の癌であればリンパ転移は極めてまれであるし肝転移はない.これに対し粘膜下層に浸潤したものではリンパ節転移は増加し肝転移の危険性は大きい.胃癌の予後を左右する最も重要な因子としての深達度診断はこれからの胃癌診断および治療にあたって常識的な知識として要求される.
手術材料にもとづいた胃癌の肉眼的な深達度診断ではX線,胃カメラによる機能的な面からの観察,例えば伸展不良や胃壁の硬化等を知ることはできないが,主として経験的になされる臨床診断に組織学的なうらづけを与え深達度診断の判定基準をより正確なものにすることは筆者らに与えられた課題であろう.
手術材料にもとづいた胃癌の肉眼的な深達度診断ではX線,胃カメラによる機能的な面からの観察,例えば伸展不良や胃壁の硬化等を知ることはできないが,主として経験的になされる臨床診断に組織学的なうらづけを与え深達度診断の判定基準をより正確なものにすることは筆者らに与えられた課題であろう.
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