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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻8号

1972年08月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 症例

Systemic lupus erythematosusにおける小腸異常像

著者: 勝部吉雄1 桜井克彦2 井上多栄子2

所属機関: 1鳥取大学医学部放射線医学教室 2鳥取大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.1025 - P.1028

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 膠原病が全身性疾患として捉えられるようになってから,罹患臓器のX線所見についての報告はかなり多い.消化器のX線所見についても同様であるが,Systemic Lupus Erythematosus(以下SLE)についての記載はすくない8).わが国でも,成書7)にはSLEの症状の一つとして腹部症状があげられているが,小腸のX線像にっいての記載がみられるものはきわめてまれである.ここに報告するSLEの小腸のX線所見は従来報告されたものよりかなり著明であり,血管炎にみられるsegmental infarctionに類似して興味深い.

症例とX線所見

 患 者:H. U. 23歳,♀.

 昭和41年12月頃より発熱,全身倦怠感,顔面の浮腫性紅斑等の症状で発病し,副腎皮質ホルモンの内服を続け,これらの症状は軽快していた,昭和45年5月30日頃より急に腹痛,嘔吐,下痢等の症状が出現し,某医にて急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を受けたが,症状は変らず精査のため胃腸透視の依頼を受けた.胃腸透視では食道および胃には著変がみられなかったが,小腸では粘膜ひだが厚く浮腫状であり,一部ではthumb-printingないしはpseudotumor様の陰影欠損がみられ,バリウムの通過も促進していたが,結腸には異常所見はみられなかった(図1).整腸剤,プレドニゾロン40mg/dayの投与を施行したが,悪心,嘔吐,下痢,腹痛等の症状は続き,るいそうが著明となり顔貌は無欲状態となった.プレドニゾロン60mg/dayに増量と同時に合成ACTH 1mg/dayを併用したところ,はじめてこれらの腹部症状はおさまった.この間下痢は約1カ月続き,便は黄緑色水様で軽度に粘液を混じていたが病原微生物は検出されなかった.末梢血液では軽度の貧血がみられ,検尿では乏尿,血尿,蛋白尿等がみられたが,血清蛋白,電解質等ほぼ正常であった.昭和45年10月の胃腸透視所見では,上部小腸はほぼ正常の部分が多かったが,なお空腸,回腸では部分的に粘膜ひだの肥厚がみられた(図2).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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