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文献詳細

雑誌文献

胃と腸7巻9号

1972年09月発行

文献概要

研究

胆・膵管内視鏡的診断法―第8報:胆道ファイバースコープを応用した術中胆道細胞診

著者: 西村明1 田紀克1 佐藤博1

所属機関: 1千葉大学医学部第2外科

ページ範囲:P.1233 - P.1243

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 最近,胆・膵管系疾患の術前診断に,十二指腸内視鏡検査や内視鏡的膵・胆管造影が試みられるようになった.その結果,従来より診断上盲点であったこの分野で有力な診断法であることが認識された.十二指腸内視は,乳頭部の病変観察には有力であるが,癌が膨大部に限局して乳頭・十二指腸粘膜に変化が波及していない場合は形態的に乳頭炎との鑑別が難しいことがある1).また膵・胆管造影もつねに成功するとはかぎらない.このような場合,病変部位の中枢側異常所見を提供する経皮経肝胆道造影や乳頭部および膵頭部病変を描写する低緊張性十二指腸造影などのX線検査が有効である.上記の各種術前検査法の駆使により,かなりの診断率向上がみられつつあるが,一方,われわれ外科医の立場からみると,まだなにか決め手を欠くといった感じがする例に手術時,遭遇することがある.そして確定診断の下しえないまま手術を行なってみても新知見を得られず,診断ならびに術式決定に迷うことをしばしば経験する.たとえば膨大部周辺に小腫瘤を触れた場合,結石,腫瘍,膵炎などの相互間の鑑別は,かならずしも容易でない.Warren2)らは浮腫や膵実質の硬化のみられる総胆管膵部に嵌頓した結石では,癌の存在が示唆されると述べており,胆管癌の成因で粘膜上皮の慢性炎症性変化が基盤となって癌化へ移行するのであろうとする意見が多い現在,癌早期発見のためにも新しい診断法の確立が望まれる.

 胆道系術中診断法としてJelinek 3)は①胆道触診,②透光法(Kirschner),③射出法(Payru.Beckner),④消息子による聴診法(Kirby),⑤術中胆道造影,⑥マノメトリー,⑦胆道鏡などを挙げている.触診法は手術時routineに行なわれているが,客観性,確実性に乏しい.ブジーによる触診も繁用されるが,限局された範囲での狭窄・閉塞の原因を区別するのに困難を感ずることが多い.術中造影も経皮経肝胆道造影以上の所見を得られないことがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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