文献詳細
今月の主題 急性胃病変の臨床
主題
急性胃病変の臨床―一胃出血の面から
著者: 川井啓市1 赤坂裕三1 木本邦彦1 日高硬1 山口勝通1 須藤洋昌1
所属機関: 1京都府立医科大学第3内科
ページ範囲:P.17 - P.23
文献概要
実際の臨床の場にあって,突発する激しい胃症状,ことに上腹部痛により内科外来を訪れる患者は多く,その中には,X線,内視鏡検査により胃粘膜に急性の出血を証明するものから,軽微な変化を認めるもの,更には他臓器の検索で異常所見を認めず,検査所見と臨床症状との間に大きなギャップの存在する例も少くない.ここでは大学病院を中心とした臨床診断から展開される診断学,内科学の従来の成書の記載とは多くのへだたりを認めねばならない3)10)11)12)13).すなわち,病理組織学的なcriteriaにのっとった胃疾患分類(胃炎,ビラン,胃潰瘍など)を直ちにこれらの例に適用することには無理があり,これらを含めた綜括的なとり扱いが必要となって来る.そこで我々は,突発する胃症状を伴い,X線,内視鏡検査により胃粘膜に異常所見を認める病変を臨床的立場から一つの症候群としてとりあげ,急性胃病変と定義した.しかし,後述するように急性胃病変は独立した症候群というよりも,むしろ下部食道,十二指腸球部下行脚の一部をも含めて上部消化管に生じた病変的化の胃における部分症として理解されねばならないことを結論した.
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