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文献詳細

雑誌文献

胃と腸8巻10号

1973年10月発行

症例

虫垂癌の2剖検例

著者: 松尾武文1 八尾宜明1 宮崎吉平2

所属機関: 1兵庫県立淡路病院内科 2神戸大学医学部第2病理学教室

ページ範囲:P.1381 - P.1385

文献概要

 虫垂癌は,発生頻度の比較的少ない疾患であり,一般にその分類にはUihlein1)の記載の方法がよく用いられている.この分類によると,虫垂癌は,カルチノイド型(carcinoid type),悪性粘液瘤型(malignant mucocelle type),結腸型(colonic type)の3型に分類することができる.なかでも悪性粘液瘤型はcystic typeといわれており,高度のムチン産生能と,特異的に腹腔内へ発育進展し,腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei)と称されるが,結腸型といわれる虫垂癌では血行性やリンパ行性に遠隔臓器への転移がみられ,その性状は腸癌のそれと同一形式であるとされている.

 McGregor2)は,虫垂癌の組織学的特徴についてカルチノイド以外の2つの型はいずれも同一起源の腺癌であるとしており,悪性粘液瘤型では比較的分化が進んでおり,乳嘴状を呈し,ムチン産生能が強く,発育はしばしば虫垂を穿孔し,回盲部全体が腫瘤の移植・転移で覆われるが,所属リンパ腺への転移は稀であるとしている.他方,結腸型では前者に比較して細胞は未分化であり,ムチン産生能は弱く,発育は粘膜から筋層にまで達し,とくに近接臓器である回盲部への浸潤増殖がみられることから,治療や予後は回盲癌と同一であると考えられている.また,Wilson3)は17例の虫垂癌を検索して悪性粘液瘤型と結腸型の中間の病型の存在を指摘しており,虫垂癌が必ずしも両型に分類できるとはかぎらないことを示している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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