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文献詳細

雑誌文献

胃と腸8巻11号

1973年11月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 症例

急性局所性上部小腸炎の2例

著者: 中村裕一1 中村勁1 谷啓輔1 岡田安浩2 渡辺英伸3

所属機関: 1福岡市医師会病院 2福岡大学医学部内科 3九州大学医学部第3病理

ページ範囲:P.1483 - P.1488

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 非特異性局所性腸炎については,本邦においても数多くの報告がみられる.Crohn1)が記載したEnteritis regionalisのⅠ期(急性型),Ⅱ期(亜急性型),Ⅲ期(慢性型),Ⅳ期(腸瘻期)の4病型のうち,外国報告例ではⅢ,Ⅳ期の慢性型が圧倒的に多く,急性型は3~15%と少ない.しかるに本邦では長洲2)の集計で局所性腸炎511例中,急性型(亜急性型を含む)は72%であり,石倉3)4)は急性型876例に対し慢性型(亜急性型を含む)227例と報告しており,圧倒的に急性型が多いことが注目される.従って本邦で報告されている急性型の局所性腸炎が,総てCrohn病の急性型であるとは考え難く,現に報告例の大多数は治癒しており,慢性型への移行を証明された症例も見当らない.外国でもBockus5)は病理学的に急性型から慢性型への回腸終末炎の移行を証明されたものはないというRappaport et al.の言を支持しており,本邦においても同様の考え方が強く,長洲2)は本邦急性局所性腸炎の報告例のうち,Crohn病急性型(非特異性局所性腸炎と呼称)の存在は否定し得ないが,大部分は別個のentity(急性局所性腸炎と呼称)に入れている.また石倉3)4)6)は北海道に多発した急性局所性腸炎は,アニサキス幼虫の感染によるアレルギー性変化であり,本邦報告の急性局所性腸炎の大部分が組織学的にアニサキス症またはそれに酷似あるいは類似のものであると述べている.本邦では急性虫垂炎またはイレウス等の急性腹症の疑いで開腹された結果,回腸の急性局所性腸炎であったという例が主として外科の立場から報告されたものが圧倒的に多く,臨床経過あるいはX線像についての経過観察を行なった症例にはほとんど接しない.

 筆者らは非手術例ではあるが,特異な臨床像を示し,X線検査,内視鏡検査および生検を行なって,経過を観察し得た十二指腸から空腸上部に限局した非特異性の急性局所性腸炎を経験したので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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