今月の主題 消化管の悪性リンパ腫
症例
小腸の悪性リンパ腫
著者:
中村裕一1
谷啓輔1
中村勁1
藤原侃2
増田信生2
南家邦夫2
八尾恒良3
渡辺英伸4
岡部治弥5
所属機関:
1福岡市医師会病院
2佐田外科病院
3九州大学第2内科
4九州大学第2病理
5北里大学内科
ページ範囲:P.209 - P.215
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小腸原発の腫瘍は良性悪性ともに発生頻度は少く,田井1)は全消化管腫瘍の0.025~0.09%と述べている.中村2)は癌研での1946年から1968年までの23年間の腸管手術例中の悪性腫瘍は560例で,そのうち小腸悪性腫瘍は25例に過ぎず,胃,大腸に比較して非常に少い事を報告している.また本邦における小腸の癌と肉腫の頻度は略々同数であるが,肉腫のうち半数は平滑筋肉腫であるので,悪性リンパ腫の頻度はきわめて少い事になる2).消化管における悪性リンパ腫の分布について,Wood3)は小腸は胃,大腸の約2倍,M. S. Naqvi4)et al.は190例中胃116例(61%)小腸56例(30%)大腸18例(9%),Walter, J. Loehr5)et al.は胃63%,小腸25%,大腸10%と報告しており,全消化管の悪性リンパ腫のうち小腸は25~50%の頻度と考えられる.
われわれは小腸に原発した悪性リンパ腫4例を経験しているが,全症例の病歴,他覚所見および手術または剖検所見等を一括して表1に示し,手術で切除可能であった症例1および2について詳述する.