今月の主題 大腸疾患 最新の話題
主題
大腸ポリポージス
著者:
田島強1
田畑育男1
戸田聖一1
棟方昭博1
今充2
阿保優2
所属機関:
1弘前大学医学部松永内科
2弘前大学医学部大内外科
ページ範囲:P.751 - P.761
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Morson1)は,大腸ポリープを表1のごとく分類しているが,大腸ポリープの分類は諸家2)3)4)5)により多様である.特に大腸ポリポージスという言葉の定義については混乱が多く,単に複数のポリープをポリポージスと呼称している者も少なくない.Welch4)は比較的限局した範囲に発生した複数のポリープをmultiple polyposisと呼んでおり,Dorand's illustrated“Medical dictionary”のpolyposisの項には,“The development of multiple polyps on a part.”と説明されているにすぎない.槇6)は,ポリポージスとは単に数個のポリープが発生した場合を意味するものでなく,より多数のポリープが広範囲に発生したものを意味すべきであると述べている,すなわち,大腸ポリープを(a)単発性ポリープ(polyp),(b)比較的限局した範囲に2個以上のものが存在する場合を多発性ポリープ(multiple polyp),(c)結腸に広範囲に多発しているものをびまん性ポリポージス(diffuse polyposis)と分類しており,卜部7)もこれに同意している.著者らもこの分類が臨床上妥当であると考えている.しかし,Peutz-Jeghers症候群のポリープは,必ずしもdiffuse polyposisではないが,multiple polypsとも異なるので,大腸ポリポージスに含めた.
大腸ポリポージスは,稀な疾患であるといわれてきたが,Colonofiberscopeの開発された昭和43年5月から47年5月までの4年間に,松永内科教室では家族性大腸ポリポージス3家系17症例,Peutz-Jeghers症候群3家系6症例を経験しており,決してごく稀な疾患ではない.