文献詳細
症例
文献概要
最近,乳児の直腸から肛門部にわたる潰瘍の症例2例を経験した.潰瘍は生後まもなく出現し,広範囲に拡がり,乳児の一般状態にも重篤な影響をおよぼした.いずれも近位大腸に人工肛門を造設し直腸から肛門への便の移行を阻止することにより,潰瘍は消褪していき,生命を維持することができた.この症例は著者が調べた範囲ではいまだ報告例をみない新しい疾患のようであり,成人にみられる潰瘍性大腸炎あるいはクローン氏病とは病変部の性状,性格,病理学的所見からみても異なっている.この疾患の病因も不明であるが,いずれにせよ新しい生命が生まれ,栄養を摂取して発育する過程に必然的に生ずる排泄物により生体が破壊されていくという悲劇的な疾患である.
症例
〔症例1〕
患 者:6カ月,男子
病 歴:生後まもなく肛門周囲に湿疹様のかぶれを生じ,皮膚科を受診,軟膏をつけてもらっていたが増悪する一方である.生後3カ月時に肛囲の一部に膿瘍を形成し,切開排膿をしてもらった.生後2カ月まで母乳を飲ませていたが,下痢便が続きあまり飲まなくなったのでミルクに替えた.その後も肛門から会陰のびらんは進行していき,1日4~5回の下痢便があり,出血を伴ない痛がる.その他,生後1カ月時に石油ストーブをつけている室で真青になり,受診しガス中毒にかかったという.生後3カ月頃より喘鳴がはじまり,現在まで継続している.生後5カ月時に全身に発疹を生じたが,麻疹ではなく原因ははっきりしないといわれた.家族歴,出生時の状況などについては表1に示した.
症例
〔症例1〕
患 者:6カ月,男子
病 歴:生後まもなく肛門周囲に湿疹様のかぶれを生じ,皮膚科を受診,軟膏をつけてもらっていたが増悪する一方である.生後3カ月時に肛囲の一部に膿瘍を形成し,切開排膿をしてもらった.生後2カ月まで母乳を飲ませていたが,下痢便が続きあまり飲まなくなったのでミルクに替えた.その後も肛門から会陰のびらんは進行していき,1日4~5回の下痢便があり,出血を伴ない痛がる.その他,生後1カ月時に石油ストーブをつけている室で真青になり,受診しガス中毒にかかったという.生後3カ月頃より喘鳴がはじまり,現在まで継続している.生後5カ月時に全身に発疹を生じたが,麻疹ではなく原因ははっきりしないといわれた.家族歴,出生時の状況などについては表1に示した.
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