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文献詳細

雑誌文献

胃と腸8巻9号

1973年09月発行

文献概要

今月の主題 胃潰瘍の良・悪性の鑑別診断 主題

胃潰瘍の良・悪性の鑑別診断―鑑別に際しての5段階の提唱

著者: 市川平三郎1 山田達哉1 堀越寛1 土井偉誉1 笹川道三1 松江寛人1 木下昭雄1 萩原健一1 牛尾恭輔1

所属機関: 1国立がんセンター放射線診断部,集検部

ページ範囲:P.1163 - P.1172

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 これからここに述べる話は,本質的にはX線診断の話ではない.内視鏡診断にも標本の肉眼的診断にも共通した話なのであるが,一つの例としてX線診断を中心として述べることとする.

 A医師がX線診断で潰瘍を見つけた.そして良性潰瘍であろうと診断した,同じ潰瘍のX線写真をみてB医師はこれは悪性すなわち癌であると診断して,激しい討論を行なった.B医師は,潰瘍の形といい大きさとか周辺の盛り上りなどは癌とするに充分な所見であると力説するに反し,A医師は,それらの所見はどれも良性胃潰瘍にしばしばみられる所見であり,それらの所見だけをもって悪性とすることはできないから良性と言わざるをえない,と主張して譲らなかった.手術して,その切除標本を肉眼的にみると,いわゆる典型的な円形の消化性潰瘍であり,A医師は診断が当ったことを喜んだ.しかし,その後組織学的に検査すると,肉眼的観察では全くわからない程度のごく小さい癌が潰瘍縁にあることがわかった.いわば純粋なⅢ型といえるような早期癌であったわけである.するとこんどは,B医師が,自分の診断が本当は正しかったのだ,といって小踊りして喜んでしまった.果して,どちらが正しかったのであろうか.これが問題提起である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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