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文献詳細

雑誌文献

胃と腸9巻10号

1974年10月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 症例

いわゆるZollinger-Ellison症候群typeⅠ様の経過をたどった十二指腸潰瘍の1例

著者: 阿部道夫1 城所澄江1 青木誠1 佐多久一1

所属機関: 1平塚市民病院内科(慶応大学医学部内科)

ページ範囲:P.1265 - P.1269

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 Zollinger-Ellison症候群(以下ZE症候群)とは難治性消化性潰瘍,胃液,酸過分泌ならびにgastrin secreting(non-insulin)islet cell tumourを有する疾病に与えられた症候群である.しかし臨床上ZE症候群を呈しながら腫瘍が膵や十二指腸に認められない場合があり,このような症例ではそのZE症候群の診断が確実であるならば胃全摘後,空腹時血中ガストリン・レベルそして酸分泌はすみやかに低下し正常値に復帰するといわれ,その本態は免疫螢光法にて証明される胃前庭部G細胞の増殖であろうとされている.これはPolakらが1972年に非常に興味深いケースとして報告したいわゆるZE症候群typeⅠであるが,このtypeⅠと思われる症例を最近経験したのでここに報告する.

症例

 患 者:○沢○一 男性 38歳 自由業

 主 訴:心窩部痛

 家族歴:特記すべきものはない.

 既往歴・現病歴:昭和42年9月,主訴,家族のすすめがあったが放置,自覚症は自然に消褪す.43年5月,主訴,体重減少,軟便,近医受診により十二指腸潰瘍の診断を受け治療にて症状寛解しそのまま再び放置す.45年4月,主訴,十二指腸潰瘍増悪を指摘され入院加療,当時膵外分泌能亢進,特に水,HCO-3conc.で著明であった.軽快一時退院.47年10月,再人院,この時はじめてImmunoassayにて異常なる高ガストリン血を証明した.胃液,酸過分泌,特に夜間基礎胃液分泌,BAO/MAO比からZE症候群を一応考慮した.膵シンチではspace occupying lesionsは不明,試験開腹をすすめるも嫌忌され軽快退院す.48年11月,突然激痛発作ありて来院,十二指腸潰瘍穿孔による急性腹膜炎の疑いにて入院,緊急手術す.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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