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胃と腸ノート
大腸の癌と憩室
著者: 小林世美1
所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科
ページ範囲:P.1296 - P.1296
文献購入ページに移動 最近続いて大腸の憩室と癌が同部位に合併する2例を経験した.2例共S状結腸に憩室症があり,そのすぐ肛門側に隆起型の癌を認めている.日本人には,S状結腸憩室の頻度は非常に低く,これだけでも短期間に2例経験するのは珍らしい.大腸の憩室と癌は,欧米では頻度が高い.どちらも低残渣食を摂取し,便秘しがちな人々に多いといわれる.憩室の発生機序は,S状結腸に発生する後天性のものでは,残渣の少い食餌をとると,S状結腸内容が乏しく,その結果腸管の内圧が高まり,収縮輪を強く発生せしめ,憩室の発生へと導く.大腸の癌は低残渣食をとる人々では,腸管内容の通過が緩慢となり,Carcinogenが長く大腸粘膜に作用する結果発生しやすくなるといわれている.以上のことより,この両疾患の合併は至極当然のことに思われる.この2例を略述し,少し文献的考察を加えよう.
第1例は,61歳女子,主訴は血便.昭和48年7月頃より時折便に血液を混ずるようになった.8月31日の大腸X-P(写真)では,S状結腸の多数の憩室と,そのすぐ直腸よりに隆起性病変(矢印)を認め,癌と診断した.9月11日の大腸ファイバースコープ検査では,肛門より13cmに隆起性病変を認め,同時に行った生検で,癌と診断された.10月11日腹会陰切除が行われ,癌は漿膜に達していたが,リンパ節転移はなく,その後の経過良好である.
第1例は,61歳女子,主訴は血便.昭和48年7月頃より時折便に血液を混ずるようになった.8月31日の大腸X-P(写真)では,S状結腸の多数の憩室と,そのすぐ直腸よりに隆起性病変(矢印)を認め,癌と診断した.9月11日の大腸ファイバースコープ検査では,肛門より13cmに隆起性病変を認め,同時に行った生検で,癌と診断された.10月11日腹会陰切除が行われ,癌は漿膜に達していたが,リンパ節転移はなく,その後の経過良好である.
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