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文献詳細

雑誌文献

胃と腸9巻10号

1974年10月発行

文献概要

今月の主題 症例・研究特集 研究

胃幽門前庭部の急性対称性潰瘍と出血性びらんとの関係

著者: 松本俊雄1 松本温子1

所属機関: 1松本内科胃腸科

ページ範囲:P.1319 - P.1326

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 胃において急性に発生する病変の中で,臨床的に最近注目されているものに,高木ら1)の報告した胃幽門前庭部の急性対称性潰瘍と,唐沢ら2)の検討した出血性びらんがある.高木はこの急性対称性潰瘍も出血性びらんも胃前庭部の平滑筋痙攣が急激に,かつ異常に強く発生して血行障害を起したために生じたもので,発症要因の程度により,時に潰瘍を作り,時にびらんを生じるものと推定している.これらの疾患は急激に発症するので,発症直後に診療する機会の多い実地医家にとり殊に重要なものである.昭和42年7月から昭和48年12月までに,私共は急性対称性潰瘍と出血性びらんとを合せて25例経験した.この経験を基に,両病変の臨床的事項,X線及び内視鏡所見についてのべ,両者の関係について検討を加えてみたい.

症例

 〔症例1〕患者:17歳,男子高校生.

 前庭部の急性対称性潰瘍.特別の既往なし.

 現症歴:受験準備で精神的緊張と睡眠不足が続いたところ,昭和47年1月10日,突然嘔吐を伴って心窩部激痛が生じた,とう痛は激烈でオピアト注射で一時的に軽快したが,容易に治まらず,3日後に消失した.発症4日目に行った胃X線検査では,幽門前庭部は狭小で,胃壁は強直性を呈し,殊に幽門前部は一層狭小化し,恰も胃癌にみられる,いわゆるZapfen様の所見であった(図1).圧迫でうすい不整形のバリウム斑が認められたが,明瞭なニッシェとは断定できなかった.胃前庭部の粘膜ひだの肥厚がみられた.発生後7日目に行った内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にそれぞれ2個ずつの白苔に覆われた浅い潰瘍が,小彎に平行して一部線状に連って認められたが,出血性びらん所見はみとめなかった(図2a).発症19日目のX線検査では前庭部の狭小,強直性は消失していた.発症26日後の内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にわずかな瘢痕を認めるのみとなった(図2b).発症時急性膵炎を疑って検査した血清アミラーゼ値は372単位(somogyi)と上昇していたが,4目後に正常に復した.肝機能は正常であった,発症8日目の胃液検査は低酸を呈し,糞便潜血反応は陽性であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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