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今月の主題 症例・研究特集 研究
胃幽門前庭部の急性対称性潰瘍と出血性びらんとの関係
著者: 松本俊雄1 松本温子1
所属機関: 1松本内科胃腸科
ページ範囲:P.1319 - P.1326
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〔症例1〕患者:17歳,男子高校生.
前庭部の急性対称性潰瘍.特別の既往なし.
現症歴:受験準備で精神的緊張と睡眠不足が続いたところ,昭和47年1月10日,突然嘔吐を伴って心窩部激痛が生じた,とう痛は激烈でオピアト注射で一時的に軽快したが,容易に治まらず,3日後に消失した.発症4日目に行った胃X線検査では,幽門前庭部は狭小で,胃壁は強直性を呈し,殊に幽門前部は一層狭小化し,恰も胃癌にみられる,いわゆるZapfen様の所見であった(図1).圧迫でうすい不整形のバリウム斑が認められたが,明瞭なニッシェとは断定できなかった.胃前庭部の粘膜ひだの肥厚がみられた.発生後7日目に行った内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にそれぞれ2個ずつの白苔に覆われた浅い潰瘍が,小彎に平行して一部線状に連って認められたが,出血性びらん所見はみとめなかった(図2a).発症19日目のX線検査では前庭部の狭小,強直性は消失していた.発症26日後の内視鏡検査では,前庭部の前壁と後壁にわずかな瘢痕を認めるのみとなった(図2b).発症時急性膵炎を疑って検査した血清アミラーゼ値は372単位(somogyi)と上昇していたが,4目後に正常に復した.肝機能は正常であった,発症8日目の胃液検査は低酸を呈し,糞便潜血反応は陽性であった.
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