今月の主題 食道・腸の生検
主題
小腸の生検診断
著者:
山岸悟郎1
三田正紀1
若狭治毅2
所属機関:
1東北大学医学部山形内科
2東北大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.171 - P.178
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空腸および回腸の生検は歴史的には十二指腸の生検とほぼ同時期に始められた.すなわちShinerによって1956年にはじめてDuodenal Biopsy Tube1)が発表されたが,これに続いて同じ年内にJejunal Biopsy Tube2)も発表されている.その後はCrosby3),Rubin4)をはじめ多くの人々5)6)7)8)9)10)11)12)によって小腸の生検器具が作製されているが,これらの器具はいずれも生検の可能な範囲を十二指腸に止まらず,空腸以下に及ぶものとしている.しかしながら近年始められた内視鏡を用いて行う生検では十二指腸が内視鏡の完成によってすでに日常の臨床に利用されているのに対して13),空腸以下を観察の範囲とする小腸鏡は未だ試作の段階に止まっているため14)15)16)17),生検もまた実用化の域に到っていない.本稿では空腸より下部の小腸の生検に関する基礎的事項,生検器具と実施手技および生検材料の扱い方について述べるとともに2,3の症例を提示する.