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文献詳細

雑誌文献

胃と腸9巻2号

1974年02月発行

今月の主題 食道・腸の生検

主題

大腸癌および有茎性ポリープの生検標本と全標本の組織学的対応について

著者: 丸山雅一1 中村恭一2 佐々木喬敏1 舟田彰1 熊倉賢二1 菅野晴夫2 高橋孝3

所属機関: 1癌研究会附属病院内科 2癌研究会癌研究所病理部 3癌研究会附属病院外科

ページ範囲:P.187 - P.201

文献概要

 最近における消化管の内視鏡診断およびX線診断の進歩には目覚しいものがある.大腸においては,結腸ファイバースコープの開発により右側結腸の観察,生検がルーチン化されるとともに,X線診断の側では,ジャイロ式万能型X線テレビ装置の開発により従来盲点であったS状結腸,盲腸,上行結腸の二重造影が容易となった10).これら検査法の進歩は,単に病変の存在診断のみならず,質的診断をも向上させている.したがって,現在では病変の総合診断のためにきわめて豊富な情報を得ることができるようになった.

 ひるがえって,生検は一般的にその目的とする対象によって評価の仕方を変えなくてはならない.すなわち,炎症性疾患と腫瘍性疾患では生検が提供する情報は量的にも質的にも異なっている.炎症性疾患,たとえば潰瘍性大腸炎における生検は厳密には診断のための決め手とはならないし,また,大腸結核の場合にも生検によってつねに結核結節を含む組織片が採取されるとは限らない.したがって,炎症性疾患の揚合の生検の価値はあくまでも他の検査による情報と同格に扱われなければならないと同時に,全検査の結果を総合したうえでの判断を生検の所見と比較することが必要である.一方,腫瘍性病変の場合の生検では,その評価の仕方に多様性を持たせなくてはならない.まず第一に,生検で癌陽性であるものは,他の情報が何であれ,癌が存在する.しかし,生検で癌陰性というのは,癌が存在しないかまたは,癌の部位から組織片が採取されていない,との2つの場合がある.ここに,生検の技術的な問題の入り込む余地がある.第2に,生検の情報が十分であるにもかかわらず,癌か非癌かの判定の困難な場合がある.良性腺腫性ポリープ,境界領域,癌とつらなる連続的な異型性といわれる所見を生検組織片上でどのように判断するかというきわめて困難な問題が提起されてくる.そして,この問題はさらに,癌の診断基準とは何かという問題をも改めて提起することになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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