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海外文献紹介「先天性不完全十二指腸隔膜閉鎖の内視鏡診断」/他
著者: 渡部和彦1 春日井達造2 鶴原一郎1
所属機関: 1鳥取大学第2内科 2愛知県がんセンター第1内科
ページ範囲:P.243 - P.243
文献購入ページに移動上部消化管にみられる先天性閉塞はまれであり,それらの多くは十二指腸,殊にファーター氏乳頭以下にみられる.著者は比較的まれな先天性不完全十二指腸膜様閉鎖を経験したので報告する.症例は21歳の女性,生後6週で先天性幽門狭窄を疑がわれ幽門筋切離術をうけている.発育は正常であったが,ガス発生の多い食物の摂取後に腹満感があり,時に食後の嘔吐があった.入院2~3週前に初回の吐,下血を来たした.X線検査では十二指腸の上行部,下行部の著明な拡張が認められ,患者は下部十二指腸狭窄の診断の下に外科治療のため当病院へ入院した.十二指腸ファイバースコープが施行され,胃内には何ら病変を認めず,スコープは幽門輪を抵抗なく通過した.十二指腸の上行部,下行部は小児の腕位に拡張していた.ファーター氏乳頭に異常はない.更にスコープを進入すると下行部から水平部へ移行する部位に内腔の閉塞が発見され,それは中心が貫通しており,開口部はシャツのボタン程度のものであり,その開口部の前壁よりに浅い潰瘍形成を見た.手術により病変を確認した.先天性十二指腸膜様閉鎖では隔膜様の結合組織が内腔を閉鎖しており,両側共に粘膜で被覆されている.この隔膜は完全でありうるし単孔,多孔を有することもある.内腔の完全閉鎖の症例では,診断は生後すぐに容易につけられる.不完全閉鎖では時に診断が遅れ,時として生後何カ月後に,または何年も後になることがある.しかしながら小児の上部消化管の奇型を熟知し,既往歴における上部消化管通過障害に由来する症状を見逃がさぬことがこの疾患の診断上大切である.胆汁性嘔吐は,強くこの疾患を疑がわせしめ,診断の確定には十二指腸ファイバースコープが有用である.
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