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文献詳細

雑誌文献

胃と腸9巻4号

1974年04月発行

今月の主題 意外な進展を示す胃癌

主題

急激に全身的悪化を示した胃癌―臨床的に非腫瘍性とみなされる症状を呈した剖検例

著者: 喜納勇1

所属機関: 1東京大学病理学教室・東京大学付属病院分院病理

ページ範囲:P.467 - P.474

文献概要

 胃癌,特にその陰在癌が全身に,あるいは他の特定臓器に転移し,それによる臨床症状──しばしば急激な症状が前面に出て,死亡まで非腫瘍性,特に炎症性疾患として治療され,剖検後はじめて胃癌の転移であることが判明することは臨床医および病理学者の間には周知の事実である.特に患者の年齢が10歳台,20歳台の際は以上の事実をよくふまえている臨床医でも経過が急激のために,あるいは症状が一見癌と全く関係ないように見えるため胃癌の診断を下し難いのはむしろ当然といえよう.一方剖検材料を取り扱う病理学者も胃癌がある程度成長している時は問題なく原発巣を肉眼的に見出すことは容易であるが,癌が微小の場合やびまん性に拡がる早期癌の場合はそれを見出すことは著明に進行する死後変化のため非常に困難である.また肉眼的局在性がつかぬまま盲目的に組織学的検索を加えても胃を全割する場合を除いて成功することが少なく,結局剖検により充分胃癌を原発とする転移形式を疑いながら結論を出しきれずに発原不明の癌として処理される場合が多いものと考えられる.

 いずれにせよ胃癌の転移が引きおこす急激な臨床症状は多種多様であることは明らかであるが,本稿では急激な全身的悪化を示した胃癌の典型例として臨床診断が非腫瘍性疾患として剖検に送られて来た胃癌症例について検討を加えてみた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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