今月の主題 症例・研究特集
研究
切除胃拡大撮影による胃癌粘膜像の検討
著者:
古賀充1
清成秀康1
稲倉正孝1
田中誠1
古賀成昌1
古沢元之助1
楢本純一1
野辺奉文1
所属機関:
1九州がんセンター
ページ範囲:P.633 - P.639
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最近の胃疾患診断学の発展はめざましく,特に胃癌については,それが陥凹もしくは隆起を呈しているものであれば,1cm以内のものでも診断可能になって来ている.しかし,平坦型,すなわち,肉眼分類ではⅡbに属するものでは,少なくともレ線診断では,診断基準が確立されているとは言い難い.今までに,多くのⅡbの症例報告がなされているが,その診断の多くは生検によってつけられているのが現状であり,レ線学的には,癌の存在を疑わせるような所見にとどまっているようである.Ⅱbに対するレ線所見として述べられているものには,胃小区の異常,壁不正,不整の小Ba斑などがあるが,胃小区の異常を除いては他の所見はいずれも,浅い陥凹や隆起の所見といえそうである.そこで平坦型胃癌をレ線学的に診断するにはやはり胃粘膜模様によって行なわねばならないと思うが,従来いわれてきている胃小区の異常という言葉だけでは,あまりにも曖味過ぎて,胃炎との鑑別さえも困難と考えられる.そこで,われわれは切除胃の直接4倍拡大二重造影像を撮影し,胃癌部分と非癌部分の粘膜像の精密な描写を行なった.このようにして得られた粘膜像を切除胃固定標本および組織標本と照合しつつ,詳細な検討を行なった.