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文献詳細

雑誌文献

胃と腸9巻8号

1974年08月発行

今月の主題 胃潰瘍の最近の問題点

主題

消化性潰瘍の病理組織学的問題点について

著者: 望月孝規12

所属機関: 1虎の門病院病理学科 2沖中記念成人病研究所

ページ範囲:P.1014 - P.1017

文献概要

 胃および十二指腸潰瘍は,消化性潰瘍とよばれ,胃液による胃壁の自家消化が病変の主体をなしている点が,消化管の他の部分の潰瘍性病変とは異なった特徴である.食道の逆流性潰瘍や吻合部潰瘍も,同じ成り立ちを示している.

言葉と定義

 潰瘍(Geschwür,ulcer)とは,病理形態学的には,体表あるいは管腔の内面に組織欠損のために生じた穴あるいは陥凹部をいい,通常その表面は肉芽組織でおおわれている.潰瘍の場合には,穴の広さに比べて深さは高度でないが,この穴がとくに深い場合には,瘻(Fistel,fistula),さらにその穴の尖端部が拡がっている場合には,空洞(Kaverne,cavity)と名づけられる.瘻や空洞は,身体の深部の病変が体表や管腔に破れた結果生じる.潰瘍も同じようなでき方により生じることがあり,1例をあげると,小腸結核や腸チフスの際には,粘膜固有層より粘膜下層にかけて存在するリンパ装置を中心とした病変が,粘膜面に破れて潰瘍が生じる.しかし,胃および十二指腸の消化性潰瘍は,管腔面より深部にむかって生じると考えられている.別の章で言及するごとく消化性潰瘍の発生の際には,胃液自家消化作用に対する抵抗力を減退させるごとき,形態学的あるいは機能的変化が胃粘膜内に生じるという考えがあるが,少なくともこれらの変化は,結核とか腸チフスの肉芽組織ほど明らかでなく,かつ独立した病変として観察されていない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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