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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科1巻4号

1966年07月発行

雑誌目次

視座

あたりまえの問題にいま一度反省を

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.335 - P.335

 私が学校を卒業してから40年,教授生活20年に及んで,全く馬齢を加えた感がする.その間,いろいろのできごとに遭遇しているが,三木威勇治君の急逝ほど,私にショックなことはない.三木君の死を悼むこと切なるものがあります.
 私が昭和2年に卒業した当時の整形外科学会は総会といつても200人前後の聴衆でそれも演題が少ないので,1人で2題も3題も出したことをおぼえている.また当時の整形外科に,一般外科医は整形外科に大きな関心があつて,両総会を同じ都市で,また,できるだけ接近した会場を選んで開催したものである.

論述

股関節症の手術

著者: 島啓吾

ページ範囲:P.336 - P.347

 股関節症の治療法には薬物療法,理学的療法,装具療法等の保存的療法もあるが一般にその効果は不満足なもので確実な効果をあげる為には手術的療法による他はないと云われている.
 従つて無益な保存的療法により有効な手術の時期を失つてはならないと云うのが現在における大方の見解のようである.

股関節症の治療

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.349 - P.359

 著者はこの問題について自分の見解を既に度々発表した.そして現在でも,同じ見解をもつている.この論文ては,最近の症例も少しく加えて,この問題について再検討してみたいと思つている.この疾患に対する手術療法はMcMurray(1935)のoblique displacement osteotomyから始まつたということができる.次で,Pauwelsが1950年に内反骨切術varus osteotomyを発表した.この方法では骨幹の内方移動を行うことなく.また臼蓋形成不全を有する症例のうちで,主として,若年者の初期の病型に対しておこなわれている.更に1961年には,VossのTemporare Hangehufte法が発表された,この方法は主として大きな外科的侵襲にたえられぬような老人に対して行なわれる.また一次性股関節症に対して好んで用いられる.以上の3手術法は一般に最もよく用いられている方法である.

境界領域

神経因性膀胱の診断と治療

著者: 宍戸仙太郎 ,   今林健一

ページ範囲:P.365 - P.370

緒言
 神経因性膀胱とは膀胱を支配する神経が何等かの原因で器質的な障害を受けた時にみられる種々の排尿障害の総称である.膀胱は腰髄から発する下腹神経と仙髄から発する骨盤神経の2種の神経によつて支配されているが,このうち下腹神経は主として疼痛伝達或いは血管運動に関与しているのみで膀胱の排尿運動は概ね骨盤神経によつて統御されている1),2).一方外尿道括約筋は骨盤神経と同様に仙髄から発する陰部神経の分枝によつて支配されている3).これら2種の神経は共に仙髄にその反射中枢を有しこれに対する高位中枢の統御のもとに円滑な排尿運動を支配している(第1図).従つてこのような神経支配径路の何れの場所が障害されても夫々障害された場所の性質に対応した種々の排尿障害が起る訳である.以下本症の診断,治療の概略について述べることにする.

診療の経験から

関節形成術を成功させるために

著者: 河野左宙

ページ範囲:P.371 - P.379

はじめに
 関節形成術の起こりは,生命の保持のための顎関節強直に対する授動手術にはじまつたが,四肢関節の機能の再建のために行なわれる近代関節形成術はMurphy,Payr,Putti,Campbell,MacAusland,Baer,Thompsonら,そしてわが国では住田,神中らの業績に負うところが多く,これら先人によつて関節形成術はその基本となる手術適応,手術手技,後療法の原則が確立されたといえる.
 一方Judetらによつて開発された人工骨頭法は,股関節機能再建の画期的手術法として期待されたが,その手術成績の検討から,いまでは限られた大腿骨近位端の腫瘍や大腿骨頸部内側骨折非癒合例,両側股関節強直の特殊例などに対する治療法の一法として応用されているに過ぎない.変形性股関節症に本手術法を応用することについては,諸家の臨床経験の結果から,最近は一歩後退したとみられている.

手術手技

植皮術—1.遊離植皮術

著者: 諸富武文

ページ範囲:P.381 - P.389

いとぐち
 皮膚移植は整形外科領域における重要な治療法の一つであって,外傷時の皮膚欠損の被覆,肉芽創の閉鎖さらに瘢痕切除部の形成などその適用範囲は極めて広い.
 現今,皮膚移植法として挙げられている代表的なものは表皮移植法(Thiersch法),中間層皮膚移植法,全層移植法(Krause法),あるいはpinch grafts(Reverdin法,Davis法)などの遊離形式のものと,有茎形式のものにはZ-plasty,Rotationなど局所皮膚を利用するもの,あるいはCross-finger pedicle-flap法,Fingerpalm法など近位の皮膚を用いるもの,さらに神経血管柄付き有茎植皮法,Chest-abdominal法,Cross arm法,管状弁形成法,Dieffenbach法,インド法など遠位の皮膚を利用するものなど種々行なわれている.これらの各様式は被覆すべき部位,創の性質および状態,その範囲,損傷からの期間,さらに患者の性,年齢および職業などに応じてそれぞれの症例に最も適したものが応用される.

歴史

日本整形外科学会雑誌から—第9巻から第10巻まで

著者: 天児民和

ページ範囲:P.391 - P.391

 第9巻の最も注目すべき論文は斎藤一男教授の「スポーツと整形外科」である.斎藤教授はスポーツ医学に整形外科学の知識を導入し,殊にスポーツの障害,外傷についての詳しい調査を行なわれた.このような仕事は教授が日本体育協会と密接な関係をもっておられたことも原因であるが,各種の競技会に進んで出席し,またスポーツ選手について各種の骨格をレ線学的に測定された.そして各種の競技に起こり易い特徴のある変化を脊椎,鎖骨,上腕骨,肘関節,手,膝,足等について詳しく調査をした.これらの事項に関してはその後優れた業績がなく斎藤教授のこの業績が色々の意味においてスポーツ医学に貢献するところがある.また岩原氏は脊椎カリエスで脊髄症状を有するものにミエログラフィーを行なってその手術的所見と題して脊髄膜の癒着があることを発見している.また慶大の島田信勝教授は整形外科の助手として「関節腔内盈気法の診断及び治療的価値」を発表している,この論文は正常膝関節の空気造影像を基礎として各種の関節炎,外傷の診断を明らかにするとともに各種の疾患の関節の内圧に関しても色々示唆するところがあった.

臨床経験

果部骨折について

著者: 玉置拓夫 ,   楢林好隆 ,   小串隆郎 ,   菅井治 ,   森清 ,   神戸太郎 ,   森満

ページ範囲:P.392 - P.398

まえがき
 果部骨折は,われわれの最近の調査によっても,交通事故,労働災害,スポーツ外傷などの機転で多発しており,四肢外傷をとりあつかう整形外科医にとってはかなり親しみぶかい骨折のひとつといつてさしつかえない.しかしながら,この骨折に対して実際に行なわれている治療内容や,その治療成績を詳細に検討してみると,本骨折に対する治療原則が充分に理解され,かつ活用されているとはいえないうらみがあるように思われる.
 本稿においては,この骨折に対する治療計画や手術手技,後療法のカイドとなり,さらに体重負荷,位置移動の時期決定の指針を与えるような分類法並びに原則的な治療方針などについて文献的に記述し,それにもとづいた自験例の整理をあわせて行なってみることにした.

Klippel-Weber病の1例

著者: 永山五哉 ,   本山豪霊 ,   橋本正弘

ページ範囲:P.399 - P.401

 血管性母斑および豚脈瘤をともなう4肢の偏側肥大症は一般にKlippel-Weber氏病としてしられている.我々は右膝関節の屈曲拘縮,および右足関節尖足変形をともなつた本症の一例を経験したので報告する.

乳児外反足様症例の観察

著者: 吉田恒丸 ,   木村繁

ページ範囲:P.409 - P.414

緒言
 「歩く」と云う事は育児の1つの目標であり,子を持つ親達にとつて深い関心の的であろう.
 従つて足の一寸した変形に対しても親は極めて敏感である.我々が乳幼児を診察する機会に内反足の如く明瞭な変形ではなく,また起立歩行開始後の所謂足内旋(うちわ足)Pigeontoeとも異なり,むしろ之等と変形の要素に於いては反対の一見外反様の変形を呈し,母親が「足の向きの悪い事」や「足首のしつかりしない事」に気付いて受診して来る例に時折遭遇する事がある.従来この様な固定された足変形を示さない,いわば非定形的な足変形に対しては月令の長ずるに従がい,多くは自然に矯正または正常足に発育する傾向があるものとして積極的な治療は行なわれぬ事が多く,之等の足変形は生後の何等かの因子により形成せられた所謂後天性のものに対し,先天性の扁平足,踵足,外反足と云う様な病名で処理されているが,その予後は必ずしも判然としていない.従つてこの種の足変形の成長に伴なう変遷と歩行開始後の形態的機能的予後の追求は将来の固定化した足変形の成立に関連して興味あるものと考え,私は少数例てあるが現在迄経過を観察し得た症例の臨床的レ線学的追求により得られた若干の知見につき報告する.

Chloramphenicolによる再生不良性貧血

著者: 鈴木勝巳 ,   高橋定雄 ,   上原宏一郎 ,   土屋恒篤

ページ範囲:P.415 - P.419

 Chloramphenicol(CMと略す)は広範囲抗生物質で,耐性も生じ難いために,各種感染症,術前,術後等に広く使用されている.しかしその反面,CMによる副作用も当然起つてくる.特に再生不良性貧血の形で現われることは注意すべきことである.一度,再生不良性貧血になると,治療は困難で,死亡率も高い.私共はCMによると思われる再生不良性貧血の3例を経験したので報告する.

検査法

リウマチ反応テスト(1)

著者: 七川歓次

ページ範囲:P.429 - P.432

 リウマチの血清反応は,感作血球凝集反応としてのWaaler-Rose試験と,latex粒子を用いたLFT(Latex Fixation Test)で代表される.この他,bentonite粒子を用いるBFT(Bentonite Flocculation Test)も行なわれている。まづこれらの試験法の由来を簡単にのべ,ついで検査法の詳細,最後に臨床的応用の実際について紹介したい.

装具・器械

腰仙部骨移植の器械

著者: 伊丹康人 ,   霜礼次郎

ページ範囲:P.434 - P.437

いとぐち
 脊椎固定術の適応範囲は,主として脊椎カリエスに応用されたHibbs,Albeeの時代にくらべ,かなりひろくなっている.また,固定術そのものも,その確実性の点で,前方固定術への期待が大きくなっている.とくに脊椎分離症に後方固定術を行つたばあい,不成功例が少くないという点で,前方固定術が高く評価されようとしている.
 ただ,前方固定術は後方固定術にくらべ,手術操作が深部で行われること,手術野に腹膜,腸管,総腸骨動静脈などが現われてくるという点で,腹部の手術になれないものには,やや煩雑な感じを与えないでもない.

追悼

Lindemann教授逝去

著者: 天児

ページ範囲:P.347 - P.347

 ハイデルベルヒ大学の整形外科学教室の教授として我が国にも馴染の深いLindemann教授は1966年4月9日急病によつて逝去せられました。教授は1901年7月31日の生れであります。本年度は国際リハビリテーション学会の会長をも兼ねておられただけにその死は惜しまれております。教授はまたハイデルベルヒ大学総長も兼ねられたことがあります。Küntscher,Mau,Güntz教授らと共にキール大学の外科出身でありますが,真の意味のドイツ整形外科医者として優れた業績を残されております。殊に最近では義肢方面にも研究を進められていましただけに学界として大きな損失であろうと思われます、。謹んで哀悼の意を表します。

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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