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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科1巻5号

1966年08月発行

雑誌目次

視座

専門医制度を考える

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.443 - P.443

 日本整形外科学会では,大分以前から専門医修練制度委員会を設けて,学会独自の立場から専門医制度に対する検討を続けてきたが,いよいよ最近になつて学会として専門医を認定する方向に進むことを決定した.どのような形で何時これが実施されるかはまだ決つていないが,遠からず具体的な案が委貝会から提示されることになろう.
 医学の進歩とともに専門分野の分化は必至であり,諸外国ではすでに専門医制度の長い歴史をもつ国が少なくない.わが国でも認定医の制度をすでに発足させた学会がある.日本整形外科学会でも最初は認定医という名称で発足するようであるが,名称は認定医であれ専門医であれ,その期するところは専門的な学識,経験,技能を尊重し,学問の進歩と正しい医療の普及に役立たせたいということであろう.

論述

リハビリテーションにおける装具の役割—体幹を中心として

著者: 嶋良宗

ページ範囲:P.444 - P.454

はじめに
 体幹用装具について述べるに先立つて,整形外科の定義について,今一度,認識をあらたにしてみる必要がある.1741年,AndryがL'Orthopedieをおおやけにしていらい,整形外科とは,運動器系統の疾患に対する外科であるといわれている.dynamicでfunctionalなこの器官の疾病を扱かうからこそ,その治療体系は,自のずからdynamicで,functionalなものでなければならないのは当然のことといえよう.
 手術を治療の一手段とする整形外科では,手術がその時点で,staticな性格を強く持つているため,どうしても,術前と術後の治療に,よりdynamicで,functionalであることが要求される.その結果,exerciseや,brace therapyをprogramにいれたrehabilitationが,クローズ・アップしてくるのは多言を要しないところである.薬剤の処方を知らない内科医を考え難いと同じように,もしも,brace therapyに精通していない整形外科医があるとすれば,いかに,その者のメスが冴えていても,治療体系は以上の理由から不完全なそしりをまぬがれ難いために,その成績をあげえられないことは,火を見るよりも明きらかなことといえよう.

潜水病と骨変化

著者: 太田良実 ,   松永等 ,   松本道太郎

ページ範囲:P.455 - P.467

 古くより潜水病(diver disease),潜函病(caisson disease)と称せられているものは,圧縮された空気圧から急速に大気圧に復帰する際に発生する特有な症候群であつて減圧症(Decompression sickness)として統合されている.又,地上から成層圏まで一気に上昇する最近の航空機の発達は目ざましいが,この場合にも周囲環境圧の急速な低下に基く種々の障害が発生する.これも減圧症の一種として理解される.要するに周囲環境圧が急速に低下した場合に発生する症候群であつて,普通これを二型に分類している.
 以上のような異常高圧環境に曝露された後に発生する直接的危険性については,よく認識され,又,それに対する予防法もほぼ確立されており,我国も含めて多くの国々に於て法制化されている.

境界領域

交通災害と医学的問題

著者: 末永一男

ページ範囲:P.468 - P.474

 交通災害という主題であるが,これについては各分野で多くの問題があると思う.わたしは,行動生理学の見地から次の3つの問題について概説してみたい.
 1.交通災害と人間工学
 2.運転免許試験制度と運転不適格者
 3.運転適性と脳波

診療の経験から

外傷性肩関節脱臼の観血的整復術をめぐつて

著者: 永井三郎 ,   玉置拓夫 ,   江川正 ,   神戸太郎 ,   岡崎威

ページ範囲:P.485 - P.490

まえがき
 その存在が見落されたままに放置された肩関節脱臼,脱臼の存在は確認されていたが,骨折の合併などのために非観血的整復が不成功に終つてそのまま陳旧化して了つた肩関節脱臼,解剖頸や外科頸,大結節小結節の骨折をともなつた肩関節脱臼骨折,などは観血的整復術の適応となりうるものとしてわれわれ整形外科医に挑戦する.
 ところでこうした例に対して行なわれた観血的整復術の遠隔成績というものは,肩関節の機能や,上腕骨頭の運命という面で一体どういうものなのか.

手術手技

植皮術—2.有茎植皮術

著者: 諸富武文

ページ範囲:P.491 - P.500

 前回は皮膚移植の実施に際しての一般的注意事項および遊離皮膚移植術の術式について述べたが,これにひきつづき今回は有茎皮膚移植術の概略について記述してみたい.
 有茎皮膚移植法は皮膚とともに皮下脂肪も同時に移植できるので,特殊な部位,たとえば顔面,関節部にまたがる大きな植皮あるいは手の外科などで広い適応を持つている.一般に手術操作がやや複雑であり,また固定による患者の苦痛も時に見られるという難点はあるにしても特に複雑な新鮮外傷および深い瘢痕を切除した後などで,骨,関節,腱あるいは神経などが露出している場合などに対しては生着が最も確実で,しかも下部の重要組織との癒着がなくかつ皮片の収縮が少ないという諸点で広い適応をもち秀れた方法である.

歴史

日本整形外科学会雑誌から—第11巻から第12巻まで

著者: 天児民和

ページ範囲:P.501 - P.501

 第11巻の巻頭には前田,岩原両教授の「脊髄外科」の論文がある.これは昭和10年前号にも書いた通り外科,整形外科の合同宿題として講演せられたものである.この論文でミエログラフィー,クロナキシーから脊髄腫瘍,限局性脊髄膜炎,脊椎カリエスによる麻痺,脊髄の損傷等の臨床的経験を詳細に報告するとともにその当時の世界,我が国の現況をも報告されたもので歴史的文献だろうと思われる.その当時は脊髄外科が整形外科医にとり上げられ漸く最盛期に達した感がある.その中で最も注目すべき業績は第90回東京整形外科集談会において岩原氏が外傷性の頸髄神経根の剥脱の1例を報告している.最近上腕神経叢の麻痺の中には神経根の剥脱のあることはすでに常識になっているが,我が国で最初にこれを報告したのは岩原氏である.

臨床経験

脛骨骨折後の遷延治癒と偽関節に対する後外側侵入法の経験

著者: 村川浩正 ,   齊藤孝雄 ,   安部英男 ,   角南義文

ページ範囲:P.502 - P.508

まえがき
 脛骨骨幹部骨折後のdelayed union,nonunionの治療では種々困難な点に直面するが,特に脛骨前面の瘢痕と感染(骨髄炎および瘻孔)が最も問題となる.
 脛骨骨幹部骨折に対して一般に前方侵入路(anterior approach)を用いることが多く,開放骨折後の瘢痕・植皮後の瘢痕のあることなどのために,再度前方に皮切を加えて金属内副子固定や骨移植術を行なうことは,皮膚の壊死をきたす危険性が大きいため,厳に慎しまなければならない.

大腿骨骨幹部骨折に対する自家脛骨片を用いた2面固定法

著者: 塩津徳政 ,   勝良顕 ,   寺松潔

ページ範囲:P.515 - P.522

まえがき
 一般に大腿骨々折の観血治療は,どの様にすれば確実に骨癒合の目的を達成出来るかということが本報告の眼目である.大腿骨のように人体の長管骨のうちで最も長大でしかも強力な筋群に包まれた骨では,その整復固定の操作が必ずしも容易でなく,症例によつては相当高度の技術を必要とすることがある.近年,観血治療の適応が益々普及拡大されるに伴つて,多くの優れた治療成績が挙げられるようになつた反面,極めて悲惨な結果を招く症例も跡を絶たない現状である.観血治療を行う場合でも,すべての症例に於て期待された経過をたどるものとは必ずしも断言出来ないものであるから,予期に反して悪い経過をとる場合もあることを十分考慮にいれて慎重に手術方針の決定に当らなければならない.大腿骨々折の手術失敗例の中でも最も厄介なものは,遊離骨片は勿論骨折端部に高度の骨栄養障害を伴うものや骨髄炎を併発して瘻孔を伴つた偽関節であるが,これらに対する治療法は又別の機会に譲るとして,普通見られるような遷延治癒乃至は偽関節でも,治療日数の著しい延長とともに不快な膝拘縮の合併が避けられなくなる.

頸椎前方脱臼に対する前方および後方よりの同時手術

著者: 岡本吉正 ,   前原毅 ,   安間敏昭

ページ範囲:P.523 - P.528

 頸椎の前方脱臼のうち,あるものは,単に牽引のみでは整復できないものもある.さらに手術をしても前方からのみの手術では,完全な配列が得られないことがある.ことに椎間関節に脱臼,骨折またはその両者があるときには,脱臼椎の下関節突起が,その下の頸椎の上関節突起の前方に乗り越えて(override)いることもあり,または関節突起部の骨折がその脱臼位で癒合していることもあるので,この椎間関節部に処置をくわえなければ,前方からの手術のみでは整復てきない.われわれは,このような例を4例経験したので,おのおのの症例,手術方法について記してみたい.

足部に発生した所謂色素性絨毛結節性滑液膜炎の1例

著者: 山口重嘉 ,   三原茂 ,   安達清治 ,   高須賀良一 ,   松永慶郎

ページ範囲:P.529 - P.532

 色素性絨毛結節性滑液膜炎は1865年Simonが滑膜の黄色腫として報告したのが最初といわれ,その多彩な組織所見から慢性出血性絨毛性滑液膜炎,慢性出血性関節炎,良性滑液膜腫,黄色肉芽腫,巨細胞腫,黄色腫,肉腫等色々の名称で報告されてきた.
 本症は肉眼的には滑液膜の黄褐色,絨毛状あるいは結節状の腫瘍状の外観を呈し,組織学的には滑液膜の単なる炎症性増殖,あるいは巨細胞や黄色腫細胞及びヘモジデリン沈着を有する腫瘍所見を呈する疾患である.即ち病理紺織学的に単一でなく,症例により,又同一症例でも部位によつて所見が同一でない.

乳幼児の弾撥指について

著者: 宗近靖

ページ範囲:P.533 - P.537

 我々が日常比較的多く見かける乳幼児の手指の運動障害に弾撥指がある.1850年Nottaにより報告されて以来,その成因,治療に関して鍾々の報告がみられる.乳幼児弾撥指は靱帯性腱鞘の肥厚及び屈筋腱の紡錘状肥厚によりpulleyの相対的な狭窄が起り発症することは周知の事実である.しかしその成因に関しては現在尚多説があり,又治療に関しても適正な処置がとられていない現況である.
 今回慶大整形外科を訪れた,乳幼児弾撥指について最近7年間97症例118指について調査し,40症例50指の遠隔成績を知り得たので特にその成因並びに治療について若干の考察を加えて報告する.

検査法

リウマチ反応テスト(2)

著者: 七川歓次

ページ範囲:P.538 - P.542

 前回では,リウマトイド因子試験の歴史的発展と試験法の技術について述べた.そのさい実際にわれわれの行つているWaaler-Rose試験,L. F. T.およびRA試験の3者をとりあげたが,今回はそれらの成績判定に心要と思われる基礎的な事項について論ずることにする.

装具・器械

髄内固定用Lentodrillの使用法

著者: 柏木大治 ,   櫻井修 ,   宮本琢磨

ページ範囲:P.545 - P.549

緒言
 骨折治療学におけるKüntscher教授の業績はあまりにも有名である.特に,現在彼の愛用しているstabile Osteosynthese即ち長管骨骨髄腔を削り拡げて,太い髄内釘で固定する方法は,本邦にも1959年第15回日本医学総会にて紹介され,以来大きな反響を呼んだ.
 我々の教室も同年来,本法を積極的に応用して,長管骨骨折治療に多大の成果を修めつつあり,既に学会,雑誌等にも発表して来た.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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