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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科1巻8号

1966年11月発行

雑誌目次

視座

日米Joint meetingに出席して感じたこと

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.767 - P.767

 今年の五月に日米Joint meetingが開かれたのを機会に,私は北アメリカと南アメリカを回つてきましたが,今回の学会で私が経験したり,考えたことを2〜3のべたいと思います.
 今回の学会で,日米の演題に1つの大きな相異がありました.日本側演題には基礎医学的なものが多く,アメリカ側はほとんど全部が純臨床的なものでありました.日本側は何んと言つても男ざかりの教授が多く,アメリカ側はほとんど全部が老成した方てありますから,演題に相異のあるのは当然でありましよう.ところで,アメリカ側は老成した方が多いだけに長年1つのテーマに取り組んで,多数の症例を集め,長年のfollow upをした成績の発表が多いのであります.これは事実の上に立つて物事を実証せんとするものでありましようが,これは言うべくして,なかなか実行のできないことであります.この点,われわれも心がけるべきことで,老成しないうちから材料を集積しておかなければできないことであります.小数例で,短期間のfollow upで自分の意見をはくようなことがあつてはならないと思います.

論述

色素性絨毛結節性滑液膜炎並びに粘液嚢炎(Jaffé)について

著者: 広畑和志 ,   公文裕

ページ範囲:P.769 - P.780

いとぐち
 Jafféの言う色素性絨巳結節性滑液膜炎並びに粘液嚢炎は(以下PVS及びPVBと略す),多くの場合関節嚢内及び粘液嚢内に出血を反覆していて,漸次その部が結節状ないしは腫瘤状に腫大増殖するものである.これは,100年前Simonの記載にあるXanthomaであり,その後になつて,1941年Jafféがこれに対して,上述の病名をつけている.しかし,実際には,1852年,すでにChaissaignacが,腱鞘に同一疾患を発見して,nodular lesionと呼んでいるので,もつと古くからの疾患と言える.このように,歴史的にみては,本症は決して珍しいものと言えない.それにもかかわらず,文献に報告されたものは,比較的少ない.
 外国でも,本邦でも,1年平均3例前後の発生があるに過ぎない.更に,この病因に関しての見解は,電顕,生化学,アイソトープ等の著しい発達や進歩にもかかわらず,現在なお一致せずまちまちである.Jafféの提唱した炎症説を無判別に支持して,PVBおよびPVSの病名を使用する人が多い.彼の報告後には,病因に関するつき進んだ研究や考察も少なく,単なる一例報告の域を出ない.もちろん経過や予後に関しての記載も非常に少ないのである.

内分泌性骨障害

著者: 上平用

ページ範囲:P.781 - P.792

 整形多科領域にで骨の発育成長障害をおこす疾患は決して少なくない.しかもこれらの疾患は原因不明のものが多く,診断および治療にしばしば困難を感ずることがある.
 近年,内分泌機能検査法が発達し,今まで原因不明とみなされていたこれらの疾患のなかには,明らかに内分泌機能異常をみだすものがあり,内分泌機能異常による骨,関節障害は重要な地位をしめるようになり,しかも治療効果を期待しうる点で意義が大きい.

境界領域

重度外傷の全身療法

著者: 恩地裕 ,   小浜啓次

ページ範囲:P.793 - P.806

はじめに
 交通災害,産業災害の発生は年とともに増加し,その重症度も著しくなつてきた。これらの外傷を取扱うのは,多くのばあい,整形外科,一般外科の医師であるが,ともすれば創部の処置に目を奪われて,全身状態の変化を見逃し,重篤な結果にみちびくことが多い.外科医のもつべき最も重要な資質の一つとして,外傷の処置が完全にできるということが挙げられるが,局所の処置はできても,全身におこつた変化に対する治療ができないものが多い.本論文はこのような欠陥を補うために,重度外傷の病態生理とそれから導かれる治療法を述べるのが目的である.

診療の経験から

年長児先天股脱の手術

著者: 河邨文一郎

ページ範囲:P.821 - P.825

I.
 先天性股関節脱臼も整復されずに10歳以上に達すると,その大多数は第3度ないし第4度の高度の骨頭転位をきたしている.患者は著しい跛行を示し,疲労しやすいため長途の歩行はむずかしくなつている.疼痛をおこすものもある.この様な状態に対して,私たちはどの様な処置を加えればよいのか?
 最もひろく行なわれるのが,転子下骨切り術(Kirmisson,Fröhlich)と,坐骨結節の高さで大腿骨を切るSchanzの骨切り術とである.これらの手術はどの様な理論的根拠に基づいているのか?

手術手技

大腿骨頸部骨折の手術手技

著者: 小谷勉 ,   市川宣恭

ページ範囲:P.827 - P.837

はじめに
 手術手技について述べるに先だつて,大腿骨頸部骨折そのものが,骨折としては複雑な要素をもつているため,それらについて要約して述べる.代表的なものに(第1図),
 (1)Subcapital:骨粗鬆のある老人に多発し,わずかの外力により起こり,骨癒合傾向は低い.
 (2)Transcervical,high:中年者によく見られ,転位も相当程度におこす.
 (3)Transcervical,low:小児に見られ,転移は少ないが,骨頭核のAvascular necrosisやepiphyseal plateのpremature closureがおこることがある.
 (4)Pertrochanteric:大きな外力により,青壮年に発生し,靱帯の損傷をともない,大きな転位を見る.
 (5)Intertrochanteric:骨粗鬆のある老人に多いが,癒合傾向は高い.

歴史

日本整形外科学会雑誌から—第17巻から18巻まで

著者: 天児民和

ページ範囲:P.838 - P.839

 第17巻の巻頭は最近京都府立医科大学を定年退職になつた河村謙二教授の「肋骨移植による脊椎カリエスの固定硬著手術法」という論文がある.河村教授は骨移植に関して多くの業績をあげているが恐らくこれが最初のものと思う.脊椎骨髄炎は抗生物質の発達した今日では非常に重篤な疾患とも言えないが昭和17年当時においては甚だ重篤な疾病である.特にこれを外科的に治療しようと努力したのに「脊椎骨髄炎の診断について」(西平賀健)がある。昭和17年と言えばすでに大東亜戦争から日米開戦に至つた時期であり戦傷者に関する業績がおいおい現われてきたが,特に「国立傷痍軍人福岡職業補導所における人腿切断者の切断端訓練について」(神中正一,稗田正虎)の諭文が注目すべきものと思われる.大腿切断者においては断端支持義足が歩容その他に甚だ良好なことに着目し,その訓練を行なつた結果を示したものである.人腿切断者の義足に関しては神中,稗田の論文が尚1篇発表せられている.「大腿義足のOrientation」と尚もう1つは「福岡型大腿作業義足の基本型について」である.第1次世界大戦当時Schedeの行なつた大腿切断義足のAlignmentの理論を消化し更にこれを補なつて神中,稗田のAlignment法を明らかにしたものである.

臨床経験

椎間板ヘルニアを思わせた脊椎のJuxtacortical chondromaの症例

著者: 石井良章

ページ範囲:P.840 - P.844

 整形外科の日常診療で診断の確立に難渋を極める事は決して少くない.特に骨腫瘍に於てはその感が深い.最近,私は臨床的に典型的な腰部椎間板ヘルニアの症状を呈し,手術により,神経根圧迫の原因が第5腰椎々体後壁に発生せる腫瘍であることを知り,病理組織学的にJuxtacortical chondromaと診断された稀有な1例を経験したので報告する.

膝関節内側々副靱帯損傷に対するBosworth法の経験

著者: 平川寛 ,   井上哲郎 ,   細田宏 ,   原瀬瑞夫

ページ範囲:P.845 - P.847

 膝関節内側々副靱帯損傷は,日常しばしば遭遇する外傷で,新鮮例では保存療法で成功するが,陳旧例では手術療法が必要である.ことに半月板損傷や前十字靱帯損傷を合併したものでは,1917年Hay-Grovesが有茎筋膜弁による修復法を発表し,我々も第6回信州整形外科懇談会でこの経験を報告した.しかし,かかる合併症を伴わない本症の頻度は非常に高く,ともすれば陳旧となつて膝関節の著しい不安定性を残す結果になり易い.我々は最近Kremerの分類で第Ⅲ型に属する症例を2例経験し,その1例にBosworth法による靱帯形成術を行なつたので報告する.

慢性関節リウマチと変形性関節症との比較検討—東京都下桧原村における検診結果

著者: 星野孝 ,   梅原忠雄 ,   太田洋 ,   鶴留寿人

ページ範囲:P.848 - P.851

 疾病の研究は一方ではcell levelよりmolecule levelへと進み,他方ではgroup levelよりPopulation levelへと進んで来ている1).即ち患者の体内におきた変化過程を調べる病理学はcell levelからmolecule levelにまで及んでおり,その分析はますます緻密となつてきている.しかし,かかる病変が生体におきた原因にさかのぼつて考えるには疫学的研究が必要で,そのためにはgroup levelよりPopulation levelへと観察単位を拡大することによりはじめて精密な結果が得られる2)
 私どもは慢性関節リウマチと変形性関節症の病態の差を比較するために,個体を中心とした臨床観察からPopulation levelへと観察をひろげたいと考え,その第一歩として東京都下の1山村において両疾患を主たる対象として検診を行なつてみた.諸種の制約のため不満足な結果しか得られなかつたが,ここに結果の大要につき報告する.

検査法

ニュージーランドで実施している脳性麻痺の早期診断法

著者: 城間寅夫 ,   荒井善美

ページ範囲:P.853 - P.856

いとぐち
 脳性麻痺(以下脳麻と略記する)を乳児期において適確に診断する事は必ずしも容易な事ではない.即ち「頸が坐らない」,「アンヨが出来ない」等の運動機能発達不全を主訴として来る乳幼児に対し,中枢性運動麻痺があるか否か(または精神薄弱の為の運動機能発達不全か)を予言する事は容易な事ではない.私は昭和40年ニュージーランドを旅行し,ニュージーランド方式とも言うべき診断法を学ぶ機会を得たので,ここに紹介したいと思う.
 脳麻児を早期に診断したならば当然これに続く適切な処置がなければならない.ニュージーランドにはVisiting Therapistと言うものがあつて,作業療法士が患児の家庭を定期的に訪問し,訓練や療育の指導をしている.我が国に於ては脳麻児の早期治療と言う事について,なお,道遠しの感があり,早期診断の意義についても事情を異にする他国とは,やや違つて来るかも知れない.

装具・器械

脊柱側彎症の手術器械—Harrington Rodの紹介

著者: 立岩正孝

ページ範囲:P.857 - P.865

 今回Harrington Rodの紹介文を書く様に編集部よりご依頼があつたが,筆者には自身でこのRodを使用した経験がいまだない.しかも本法の使用経験を有する適格者を知らないので,筆者がDr. Harringtonの手術を見学した際のことを想い出しつつ,文献を参照し紹介文を書く次第である.
 脊柱側彎症の治療原理は,側彎の矯正と矯正の保持であるが,大別して体外から矯正力を与える方法と体内に直接矯正力を導入する方法とがある.今日まで発展して来たのは主として前者でありRisserのLocalizer Cast. BlountのMilwaukee brace等に代表される.しかしこれ等の方法には装具またはギプス装着期間が長い.矯正力が不十分,偽関節発生率が高い等の問題点が残されている.

質疑応答

膝関節痛についての考え方

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.866 - P.867

I.関節の疼痛について
 疼痛には精神的要素が多いものもあり,正確につかみ難いことがある.ここでは感覚としての疼痛すなわち痛覚について考えよう.痛覚は疼痛神経によつて伝達される.
 関節の疼痛神経線維は,大部分線維関節包に,一部靱帯に分布し,少数の線維が血管の外膜に沿つて,或は独立に滑膜に達するのみで,滑膜絨毛内には疼痛神経の分布がなく,またメニスクスには少数の神経終末が発見されたが,関節軟骨には疼痛神経がない.したがつて関節のいたみは関節包,靱帯に由来するものと考えてよく,滑膜は疼痛に鈍感である.

海外だより

ソ連の整形外科を覗いて

著者: 伊藤忠厚

ページ範囲:P.868 - P.870

 英米をはじめ,西欧諸国の整形外科の状況は比較的よく紹介され,また,文献でも読まれているので一般に知られているが,ソ連を中心とした共産圏諸国の状況はほとんど知られていないようである.私は1959年に米国留学の帰途に訪ソを計画したが,当時の国際情勢からは難しく途中で断念したので残念に思つていた.たまたま本年4月ニューヨークで,コロンビヤ大学整形外科開設100年祭が催され,また,5月には日米整形外科合同会議が米国の西部で行なわれ,これに出席することになった私は,その間を縫つてソ連を訪れることにした.したがつて言わばソ連を覗き歩いて来たに過ぎないが,それでも今まで触れたことのない多くのものに触れた感が強い.
 医学の方面は別としても,聞くと見るとの相違を痛感した事が多かつた.ソ連の状況は時々刻々と変つて行くと言われており,昨日のソ連と今日のソ連とは違うのだと極言する人もある位であるから,そのためであるかも知れない.

フランス整形外科の現況(1)

著者: 弓削大四郎

ページ範囲:P.871 - P.877

 著者はフランス政府招聘技術給費生として1965年7月から1966年4月まで滞仏,その間,主に,パリのCochin病院整形外科でMerle d'Aubigne教授の許に勤務し,最近のフランス整形外科を学ぶ機会を得たので,Merle d'Aubigne教室を中心として,私の知ることが出来たフランスの医学教育,医療制度,整形外科の現況やフランス整形災害外科学会などについて紹介したいと思う.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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