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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科1巻9号

1966年12月発行

雑誌目次

視座

手の外科と整形外科

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.889 - P.889

 外国のいわゆるhand surgeonの中には,整形外科出身者のほかに外科や形成外科出身者がまじつているが,日本で手の外科に興味をもつている者はほとんど整形外科医のようである.したがつて日本の手の外科は整形外科の一部をなしているといつてよい.日本手の外科学会にしても,創立当初から数年間は,広く同好の士を求める意味もあつて,独立した総会を秋に開催していたが,最近は日本整形外科学会に直結して,春に総会を開くようになつた.
 もともと手そのものが四肢の一部であり,運動器官として大変重要な機能をもつていることを考えれば,手の外科が整形外科の一部であることは当然であり,整形外科医たるものは手の外科の知識をもたないわけにはいかない.

論述

新鮮外傷の処置

著者: 水町四郎 ,   鈴木勝己

ページ範囲:P.891 - P.898

 戦時には悲惨な外傷が多発するが,平和な今日でも重篤な外傷は跡をたたない.交通機関が高速度化し,産業方面においても工業の重工業化,農業や土建の機械化等が見られたため,交通外傷も労働災害も重症が多くなつて来た.
 外傷の辿る運命はその半分が受傷時の外力によつて決定され,残る半分が治療に当る全部の人々の努力によつて決定される.どんなFollw upの成績が示されても予防に勝る治療はない.しかし,一たん外傷が起れば交通外易であれ,労働災害であれ初期治療によつて予後は決定づけられる.救急医に限らず,最初に外傷の処置に当る医師は,重大な使命を負つている.我々が外傷の障害認定に従事し後遺症状を見る際,初期治療が適切でらつたならば労働力をかくも無惨に破壊しなかつたであろうと初期治療そのものに対して憤りを感ずることもある.

リハビリテーションと整形外科の責任

著者: 土屋弘吉

ページ範囲:P.899 - P.902

はじめに
 1958年に私はNew YorkのInstitute of Physical Medicine and Rehabilitationのfellowとして渡米したが,その当時わが国では,リハビリテーションという言葉すらも殆ど知らされていなかつた.阪大の水野教授がそれ以前にすでにリハビリテーションについて雑誌に書いておられるが1),一般的には未だ誰も関心を持たない頃であつた.私自身はつきりした理解をもつていたわけでなく,整形外科の仕事の一部分だろう位にばく然と考えていた.
 渡米してまずColumbus, Ohioに立寄つた折に,そこのリハビリテーション科のWorden教授(現California大学教授)と会食をする機会があつた.その時Worden教授から,リハビリテーションは整形外科とは関係のない全く独立した専門分科であると聞かされて,はじめてびつくり仰天,自分の迂濶さに気がついたわけである.

シンポジウム 義手・義足

義手

著者: 稗田正虎

ページ範囲:P.903 - P.912

I.義肢の発達に関する歴史的背景
 義肢の発達は西歴紀元のはじまる以前から,戦争と密接な関連があつた.武士の負傷した手足が救うことがてきないときは切りおとされた.切断術は無益な手足を切りおとし,病弱の身から開放し,生命を救うためになされた.中世紀頃には,感覚の消失した癩の手足や,麦角中毒で麻痺した手足を切断し,また砲創による創や刑罰としてみせしめのため多くの人が四肢を切断された.戦斗技術が進歩するにつれて外科的手技や義肢の応用も進歩してきた.西歴紀元の初期につくられた義手は現在用いられている普通型のものと非常によく似ている.しかしながら,ほとんどの義肢は実用的には余り使われなかつたが,これらを作つた職人は,機能的か美容的か,いずれかの一定の目的をもつていた.記録に残つている義手は,装用者が健手で力を加えて目的物をつかむことができるよう作られていた.Gotz von Berlichingen(1509年)によりつくられ,使用された義手は,金属製の関節のついた指をもつており,これで劔を握ぎると,自分の手で劔を打らこむよりも強い力で打込むことができるほど有用なものであつたといわれている.

義足

著者: 佐久間穣爾

ページ範囲:P.913 - P.922

はじめに
 人間の歴史と共に古い義足も初めは切断者が自分でつくるより仕方がなかつた.中世になつても木の棒足の程度だつたようである.16世紀のフランス外科医Poréは今日の義肢製作者にあたる錠前師と協力し現代義足の原型をくりだしたといわれている.第一次大戦でドイツを中心に発達した義肢の学問は第二次大戦後の米国で国的努力のもとにさらに理論と実際の両面で飛躍的な進歩をとげた.
 切断者を扱う医師は義足そのものについての知識はもちろんのこと,処方から検定(Checkout)さらにその先まで責任が及ぶことを認識せねばならない.検定は個々の患者につき,ときには互いに相反する快適さと機能と外観とを総合的に考えてなす判断の過程であるがとかく軽視されてきた傾向があるのは残念である.ここでは主に具体的な処方例につき構造と特性を中心に述べる.

切断者のリハビリティション

著者: 沢村誠志

ページ範囲:P.923 - P.933

 切断者のリハビリティションプログラムには,切断手術から義肢の装着訓練を行ない,更に,必要あれば,職業訓練をうけて社会復帰するまでの過程が含まれる.従つて,単に医学的な問題のみならず,精神的,また,社会的な問題があり,具体的には,次の様な項目があると思われる.
 (1)切断という精神的打撃にうちかつための術前及ひ術後の心理面ての援助と克服意欲の養成

―質疑応答―切断のレベルおよび切断端についての考慮はいかにするか

著者: 石田肇

ページ範囲:P.934 - P.935

 切断及び関節離断は,四肢の欠損を招来し,その機能障害も大である故,可及的避くべきは勿論であるが,生命保存の唯一の手段で,慎重な適応決定後,リハビリテーションプログラムの一環として施行する時は,敢て辞すべきではない.愈々切断施行が決定された時,次の問題として切断高位の決定に迫られるが,先す患者が切断後,義肢装着の可能性の有無と,切断者の機能的分類としてRussekの云う6段階の何れの範疇に属するかの評価が初めになされねばならない.
 次に切断高位決定に考慮すべき要因として,
①患者の全身状態,②病因,③患肢の局所的状態,④年齢,性,職業,生活様式及び⑤将来装着すべき義肢の種類等を参照して,決定すべきである.

境界領域

熱傷の治療について

著者: 林周一 ,   石川洋三 ,   奥田徹 ,   八木義弘 ,   寺島浩然 ,   関口忠男 ,   福島弘毅

ページ範囲:P.937 - P.944

はじめに
 最近,わが国に於て,相次ぐ飛行機事故が起こり,その際多数の重症熱傷患者の発生をみたことは記憶に新しい.
 熱傷は突発的に発生し,文明の進歩と共に交通機関や工場に,又日常家庭生活に燃焼物質,爆発性物質が身近に取扱われ,その災害により今後ますます重症広範熱傷の多発が予想される.

診療の経験から

脊髄損傷患者痙性麻痺の治療経験

著者: 玉井達二 ,   後藤賢治 ,   今村雄彦 ,   小林忠功 ,   岡村岑生 ,   橋本広 ,   広田耕三

ページ範囲:P.945 - P.949

はじめに
 脊髄損傷は外傷中でも最も悲惨なものの一つではないでしようか.生命の予後は色々な治療の進歩で非常に良くなつて来ましたが,機能の予後は,どんなに努力しても受傷した時の脊髄の損傷の状態で左右され,その後の取扱いが悪ければ当然予後も更に悪くなります.一つの破綻が起ると取返しのつかない事にもなり,いわゆる累卵の危きにある様に思えます.
 脊損の患者を見ていますと,一般には受傷当初に失われた筋のtonusも,損傷された脊髄の処に反射弓のある反射以外の反射も現われて来ます.然しあるものでは筋のtonusも反射も出ず弛緩性麻痺のままで経過し,あるものでは筋のtonusも反射も異常に増強して痙性麻痺の状態になるものがあります.

紹介

異種脱蛋白処理骨の臨床応用—Kobe Boneの背景

著者: 桜井修

ページ範囲:P.950 - P.959

緒言
 外傷ないし疾病によって損傷を受けた骨は,骨組織を以て再生という形をとらなければ,支持器管としての機能を恢復し得ない.
 しかし,骨の自働的修復には,限界があり,臨床上の目的に沿つて,構造的,機能的再建のために,局所以外からの骨の補充を要する場合が多い.又,この場合,局所以外からもたらされた組織が,どのような過程を経て骨の再建に寄与するのかの基本的な問題も未だ完全に解明されていない.

臨床経験

手根管症候群の7例

著者: 新野徳 ,   井手正敏 ,   板東祐和 ,   田村大司

ページ範囲:P.971 - P.978

 手根関節屈側において手根骨と横手根靱帯(Lig. Carpi transversum)にかこまれた管腔の間を正中神経並びに浅指屈筋,深指屈筋等多数の腱が通つており,種々の原因によつてこの管腔に障害が起ると先ず正中神経が圧迫を受ける.従つて,これより末梢の正中神経の支配領域である手掌から母指,示指,中指並びに環指の橈側にかけて疼痛,知覚異常,知覚脱失,筋萎縮等が現れる.これらの疾患は手根管症候群として1911年Huntによつて始めて報告され,Cannon等(1916)によつて更に詳細に記載された.我々の教室でも昭和30年より10年間に7例の患者を経験したのでここにまとめて報告する.
 症例は女性が5例,男性が2例であり(第1表)左右別ては右4,左3例であつた.

Discography施行時の疼痛発現部位について

著者: 中川俊 ,   穴沢進 ,   市堰英之 ,   吉田三夫

ページ範囲:P.979 - P.983

はじめに
 Bonica1)によれば痛みは末梢性の痛み,中枢性の痛み及び心因性な痛みに三大別されるが,整形外科領域ては末梢性の痛みの中,持に深部痛覚及び連関痛が診断上屡々問題とされるのであるが,これら痛みの発現部位としては筋,腱,靱帯及び関節嚢等に代表される体性深部組織と共に,血管系,自律神経系も又問題とされる事は云うまでもない.従つてこれら痛みの研究はLewis2),Kellgren3),4),5),Pedersen6),Inman, Saunders7),Theobald8),Travell9)及び石田等10),11),12)により報告されているが,我々も腰痛患者のDiscography施行時の深部痛覚の発現部位,連関痛のそれについて検索を行つた.

慢性関節リウマチに発生した膝窩下腿嚢腫の4例

著者: 松本淳 ,   永野柾巨 ,   田中秀 ,   三上隆三

ページ範囲:P.985 - P.988

 膝窩部の嚢腫は,古くから報告がみられるが,1877年Baker1)が8例を報告しており,一般にはBaker's cystの名で呼ばれている.しかしその呼称はさまざまでpopliteal bursitis,semimebranosus bursitis,medial gastrocnemius bursitis,gastrocnemiosemimembranosus bursitis popliteal cyst等が使われ,発生機転について,種々議論がさなれており,又機能的にも重要な膝窩部に発生する事から,臨床的にも色々な興味をひいて来た.最近私どもは膝窩のみでなく,広く腓腹部に及ぶ大きな嚢腫を4例経験し,手術的治療を行つたので,その発生機転に関する考察を加えて報告する.全症例を表に示し(第1表)発生部位を図にあらわす(第1図).

骨化を呈したHoffa病の2症例

著者: 栗山栄

ページ範囲:P.989 - P.992

 1904年Hoffaは膝蓋腱下脂肪体が外傷及び炎症による結合織の増殖肥大を生じ特有な病像を呈するものを記載した.所謂Hoffa病である.その後Bircher(1929),Diamant-Berger et Sicard(1931),Friedrich(1927),F. Rost(1922),F. Holldack(1938)等の報告があるが極めて僅少である,本邦においては高知(1939),徳岡(1943),諸富(1949),野田(1952),三宅(1959)等の報告がある.我々は膝蓋腱下脂肪体が骨化を来したHoffa病の一型と考えられる2症例を経験したのでここに報告する.

手袋の糸のてん絡による乳幼児指尖部壊死の2例

著者: 斉藤信夫 ,   大湊八郎

ページ範囲:P.993 - P.994

 乳幼児保育上の事故として手袋の糸のてん絡による指尖部壊死の報告例はきわめて少ない.しかし乳幼児の保育にあたつて手袋を使用する機会は非常に多く,したがつて事故の発生頻度は実際にはかなり高いのではないかと思われる.私たちはこのような症例を2例経験したので報告する.

検査法

関節鏡による検査法

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.995 - P.1003

いとぐち
 膝関節の関節鏡検査は誰でも習えばできる実用的な検査法となつた.今日主として用いられる関節鏡は19号および21号関節鏡であるが,とくに21号関節鏡はすでに国内の多数の病院で使われており,一方諸外国へも輸出されるようになつた.それは21号関節鏡が,カラー写真撮影が容易にできること,および従来至難とされたメニスクス・交又靱帯などの観察が確実容易であることの2大特色をもつたもつとも実際的な関節鏡であるためであろう.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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