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シンポジウム 義手・義足
義手
著者: 稗田正虎1
所属機関: 1鉄道弘済会身体障害者福祉部
ページ範囲:P.903 - P.912
文献購入ページに移動義肢の発達は西歴紀元のはじまる以前から,戦争と密接な関連があつた.武士の負傷した手足が救うことがてきないときは切りおとされた.切断術は無益な手足を切りおとし,病弱の身から開放し,生命を救うためになされた.中世紀頃には,感覚の消失した癩の手足や,麦角中毒で麻痺した手足を切断し,また砲創による創や刑罰としてみせしめのため多くの人が四肢を切断された.戦斗技術が進歩するにつれて外科的手技や義肢の応用も進歩してきた.西歴紀元の初期につくられた義手は現在用いられている普通型のものと非常によく似ている.しかしながら,ほとんどの義肢は実用的には余り使われなかつたが,これらを作つた職人は,機能的か美容的か,いずれかの一定の目的をもつていた.記録に残つている義手は,装用者が健手で力を加えて目的物をつかむことができるよう作られていた.Gotz von Berlichingen(1509年)によりつくられ,使用された義手は,金属製の関節のついた指をもつており,これで劔を握ぎると,自分の手で劔を打らこむよりも強い力で打込むことができるほど有用なものであつたといわれている.
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