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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻1号

1975年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第48回日本整形外科学会を開催するに当つて

著者: 諸富武文

ページ範囲:P.7 - P.8

 先日の神戸市における第47回日本整形外科学会総会会長柏木大治教授において私が正式に会長の指命を受け,第48回日本整形外科学会を担当することになりました.私および教室員一同にとつてこの上もない光栄であるとともに,その責任の重大さを痛感しております.しかも昭和50年4月に開催される日整会総会期間は丁度第19回の医学会総会の年にも当りますので会員の諸先生のご期待に添いますようわれわれ全員一致協力してその準備に当つております.もちろんわれわれのみでこの大役を背負いきれるものではありませんので,この一年間理事,監事,幹事の諸先生,さらには各種委員会,プログラム委員の方々に絶大なるご協力を頂いており,常々感謝致している次第であります.しかし何分にも狭い京都の街で数十の分科会が総会に互して同時に開催されることは会場その他限られた施設にも自ら制約があり,丁度観光シーズンとも重つて御宿泊につきましてもかなりご迷惑がかからないかと今から心配している次第であります.

視座

大腿骨頸部内側骨折後におこる骨頭の変化

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.9 - P.9

 大腿骨頸部内側骨折の治癒過程において骨頭にcollapseがおこることがあり,これが重要な合併症になつているが,この問題は未だに解決されていない.この骨折の大部分は骨頭下骨折であつて,superior retinacular vesselsが断裂するから骨頭の荷重部を含む大部分が阻血性壊死に陥る.Inferior retinacular vesselsもしばしば断裂するが,この場合には全骨頭が阻血性壊死に陥る(同様のことは距骨々折や橈骨々頭骨折にもおこる).しかし関節軟骨は滑液から栄養を受けているから生存しつづける.整復固定を行うと,頸部端から幼若線維細胞を伴う新性血管が迅速に壊死骨頭内に進入し,壊死骨の吸収と新生骨による置換が始まる.頸部被膜もこれに参伊する.壊死骨の置換完了には2年以上の期間を要すが,この長い期間に亘つて関節軟骨は鋳型となつて生き残り,骨頭の原形を維持するために重要な役割を果す.
 血流を回復した骨頭内に壊死骨置換が進行するに従つて,壊死骨柱が吸収されて抵抗の弱い新生骨の量が増加すると,骨頭の力学的強度が著しく低下する.この時期に骨頭がその強度を越える圧を受けると荷重部にcollapseがおこる.骨柱骨折,血管断裂,血腫形成のためcollapseをきたした骨頭荷重部の新生骨は壊死に陥る.この状態は一般に阻血性壊死と呼ばれているが,上述のような一連の病変の過程からすれば適当な用語でないことがわかる.

論述

膝関節円板型メニスクスについて

著者: 小林晶 ,   上崎典雄 ,   光安元夫

ページ範囲:P.10 - P.24

はじめに
 膝関節円板型メニスクス(以下「メ」)についてはすでに九大整形外科天児一門1,14,18,26)の詳細な研究をはじめとして他の多くの報告8,15,16,21)もみられる.外国における報告も少なしとしないが4,5,7,9,11,17,20,24),わが国にくらべて症例数が少ない印象を受ける.わが国における「メ」障害が外側円板型「メ」を主体とすることは天児1)により報告されたが,諸外国においてはむしろ円板型「メ」の発見は症例報告的な意味を持つ程の印象を直接,間接にうける30)
 こういうことをふまえて九大整形外科の22年間に集積し得た円板型「メ」障害の実態を報告することはわが国における本障害の一端を示すものとして意義があると考え,ここにまとめて提示する次第である.

関節軟骨の微細構築とその変性

著者: 井上一

ページ範囲:P.25 - P.33

 関節軟骨は,関節運動という巧妙な機能において,古くから興味深い対象であり,その構造的特微についても,数多くの研究がある.その機能面から考えると,関節軟骨は運動時における潤滑面を形成することと,絶えずかかつてくる荷重を緩衝する装置であることも容易に想像できる.
 潤滑面としての関節軟骨表面の構造と機能については,近年詳細に研究されており,ほぼ統一した理論的説明が行われるようになつた.

骨・軟部腫瘍に対するCryosurgeryの応用—特に病理組織学的検討と適応について

著者: 保高英二 ,   高田典彦 ,   曽原道和 ,   館崎慎一郎

ページ範囲:P.34 - P.43

はじめに
 組織に超低温を作用させて壊死に陥らせる原理(cryonccrosis)を外科的治療手段として応用したものを一般にcryosurgeryと呼んでいるが,1961年Cooper1)が液体窒素を用いる組織の凍結破壊法を発表して以来,cryosurgeryは世の脚光をあびるようになり,各科領域で著しい発展をみている.しかしながら最近広く行われてきているcryosurgeryは,その特徴として,外科,婦人科,泌尿器科,皮膚科のごとく解剖学的出口,すなわち自然のdrainageを有する各科領域で応用されることが多いが,整形外科領域における疾患の場である骨軟部は,元来閉鎖的な部位であり,その点において特殊性を有している.
 我々は,それらの点を考慮しながら,cryosurgeryが整形外科領域に応用できないものかと考え,1972年以後,基礎的,臨床的に検討を加えてきた.なお,経過期間が短いのであるが,病理組織学的検討およびその手技,適応などを中心にcryosurgeryの現況につき概説を行うものである.

検査法

膝屈伸筋の疲労曲線について

著者: 御巫清允 ,   大井淑雄 ,   谷岡淳 ,   篠崎直子 ,   渡辺慶寿 ,   阿部徳之助

ページ範囲:P.44 - P.47

はじめに
 筋肉が収縮を持続したり頻繁に収縮弛緩をくり返すといわゆる疲労が起こる.この疲労という現象自体もかなり難解な要素が含まれている.我々は数年来筋肉の収縮速度をある一定に制禦して筋力,筋収縮速度,筋仕事量などの測定や相関を調べることのできるCybex machineを使用している.疲労現象をより実際的に簡便な方法でしかも客観的に捉える目的で本機を用いて成人の膝関節の屈筋と伸筋の疲労曲線を求めてみた.整形外科領域における膝関節の手術,大腿下腿の手術は最も広く行われているものの一つであり術後の大腿四頭筋やハムストリングスの筋力増強は手術の成績を左右する位重要である.その大腿四頭筋やハムストリングスの収縮力や疲労現象をより深く考察することは術後の後療法に指針を与えることが可能であると考えている.

装具・器械

われわれの開発した多軸式下肢牽引整復台について

著者: 井上肇 ,   三上隆三 ,   土居通泰

ページ範囲:P.48 - P.53

 整形外科分野では手術はもちろんのことその他すべての手技は,当然のことながら四肢および軀幹に対するものが多く,従つてその術中にはかなり微妙な四肢軀幹の位置取りや持続的な希望肢位保持を要求される.また手術に際しては骨内操作が多いため手術法が高度になればなる程イメージインテンシファイアー(以下「イメージ」と略記)による透視やレントゲンコントロールが必要になつてくる.このため従来の外科用手術台では満足せず,今まで種々の牽引手術台が開発されて来ている.この要求は事特に筋力が強く重量も大きく,1人の足持ち助手のコントロールではままならぬ下肢の手術に対して強く出されて来ている.しかしながら既成の牽引手術台の多くは,
 (1)両下肢を牽引するように設計してあるので,構造が複雑な上に附属品が多すぎて使いこなせない.

第47回日本整形外科学会総会より

リーメン・ビューゲル法<総合討議>

著者: 植家毅

ページ範囲:P.54 - P.60

 昨年4月,神戸大学・柏木教授を会長として開催された第47回日本整形外科学会総会において,本総会では始めての試みである「総合討議」の方式がとり入れられた.この方式はchairman,cochairman,introductory speaker,speakersおよびaudienceが一体となつて討議をすすめるきわめてuniqueなもので,その成果が期待されていた.
 先天股脱関係でも,リーメン・ビューゲル法と先天股脱観血的整復法の二つが総合討議に取り上げられ,筆者もintroductory speakerとしてリーメン・ビューゲル法の討議に参加させて頂くことができた.今回の総合討議を,わが国での先天股脱の保存的治療における一里塚としたいとの自負もあり,総会を控えてお忙がしい各speakerに,講演内容をうかがい,二度三度と面倒な質問に対してお返事を頂くなど多大のご迷惑をおかけしたにもかかわらず,時間的な制約もあり,また私自身の至らぬ点からも充分な討議を尽すことができなかつたように思う.紙面をかりて,今一度総合討議をふり返りながら,introductory speakerとして紹介した口演内容とともに,当日提起したリーメン・ビューゲル法(以下R. B.法と略記)の問題点について述べてみたい.

討論

骨・軟部腫瘍症例検討

著者: 青池勇雄 ,   赤星義彦 ,   阿部光俊 ,   荒井孝和 ,   石井清一 ,   石井良章 ,   石川栄世 ,   石田俊武 ,   伊藤慈秀 ,   入久巳 ,   岩崎宏 ,   牛込新一郎 ,   牛島宥 ,   薄井正道 ,   姥山勇二 ,   遠城寺宗知 ,   大野藤吾 ,   奥野宏直 ,   小川勝士 ,   小川正二 ,   尾島昭次 ,   神崎正紀 ,   古瀬清夫 ,   後藤守 ,   坂江清弘 ,   佐々木鉄人 ,   佐藤利宏 ,   佐野量造 ,   篠原典夫 ,   芝田仁 ,   下田晶久 ,   下田忠和 ,   杉浦勲 ,   祐川公志 ,   高田晃平 ,   高浜素秀 ,   田口孝爾 ,   田仲俊雄 ,   武智秀夫 ,   近沢良 ,   堤啓 ,   徳岡昭治 ,   鳥山貞宜 ,   土肥千里 ,   花岡英弥 ,   東成昭 ,   檜沢一夫 ,   日高恒彦 ,   福田宏明 ,   福間久俊 ,   古屋光太郎 ,   前山巌 ,   三方淳男 ,   宮地徹 ,   元井信 ,   森重照夫 ,   山下広 ,   山脇慎也 ,   柚木紘一郎 ,   湯本東吉 ,   葉山泉 ,   吉川尚孝 ,   吉田春彦

ページ範囲:P.61 - P.89

症例1
 患者:45歳男子.
 主訴:左手掌の腫瘤.

海外だより

人工股関節の反省期へ

著者: 鈴木三夫

ページ範囲:P.90 - P.92

 フランス整形外科の有名クリニックは,定期的に公開セミナーを開催して,その最近の業績を発表する.その主なものは,下記の三者があげられよう,筆者はそれらの主な業績を紹介し,そこに察知される注目すべき動向を指摘しようと思う.
 1.Cours Supérieur de l'Hôpital Cochin, Paris. 1974年3月11日〜16日
  Service du Prof. M. Postcl
 2.Journées, de Graches. Hôpital Raymond-Poincar, 1974年6月13日〜15日
  Scrvice du Prof. R. Judct
 3.Journécs Lyonaises de Chirurgie du Genou, Lyon, 1973年9月19日〜22日
  Service du Prof. A. Trillat

臨床経験

非回復性腕神経叢損傷に対する機能再建術

著者: 上平用 ,   山崎堯二

ページ範囲:P.93 - P.99

 前途有為な青少年を,一瞬にして永久不具者とならしめる腕神経叢損傷,特に神経根の引きぬきを伴つた損傷が,近年交通災害の増加によつて,数多く見受けられることは周知のとおりである.
 われわれはこのように機能的に予後不良な非回復性腕神経叢損傷の治療・機能再建術についての見解を,最近の経験を中心に報告する.

Liteplast(System)臨床試験報告

著者: 景山孝正

ページ範囲:P.100 - P.104

 Liteplast(System)は,米国メルク社が開発した新らしい整形外科用固定方式である.すなわち,粗い網目構造の,ガラス線維にポリエステル樹脂加工を施こした柔軟な粘着性織物で作られた巻軸帯(第2図)を,必要身体部位に巻き,紫外線照射により硬化させるものである.
 われわれは,本方式を骨折その他の40例の固定に用い,また他の10例には石膏ギプス固定を行ない,本方式の臨床的有用性を従来の石膏ギプス方式と比較して検討し,その結果を報告する.

カラーシリーズ 整形外科手術・6

脊柱側彎症に対するHarrington手術

著者: 井上駿一

ページ範囲:P.2 - P.5

 1962年Harringtonにより発表された側彎症手術は,現在標準術式として世界中で行なわれており,1972年度のわが国側彎症研究会の34施設における調査でも年間総手術の40.2%(175例)に本法が実施されている.Harrington自身手術手技に4たびの変更を加えたが,原則的には凹側上位中間椎の関節突起と下位中間椎より1椎下位の椎弓にそれぞれHookをかけOutriggerをこれにセット伸長し,ついで凸側一次カーブ上下端の横突起にHookとCompression rodを装着し,ついでOutriggerを除去の上Distraction rodを凹側Hookに挿入し凹側における伸長力と凸側の圧迫力により矯正を行なうのが原則である.後方固定は胸椎では凹側椎間関節に円形のDowel facet fusionを行い第11胸椎以下の腰椎では両側椎間関節周辺に数コの縦割を入れ,その間に骨移植を行うLateral gutter fusionを行っている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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