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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科10巻1号

1975年01月発行

文献概要

視座

大腿骨頸部内側骨折後におこる骨頭の変化

著者: 伊藤鉄夫1

所属機関: 1京都大学医学部整形外科学教室

ページ範囲:P.9 - P.9

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 大腿骨頸部内側骨折の治癒過程において骨頭にcollapseがおこることがあり,これが重要な合併症になつているが,この問題は未だに解決されていない.この骨折の大部分は骨頭下骨折であつて,superior retinacular vesselsが断裂するから骨頭の荷重部を含む大部分が阻血性壊死に陥る.Inferior retinacular vesselsもしばしば断裂するが,この場合には全骨頭が阻血性壊死に陥る(同様のことは距骨々折や橈骨々頭骨折にもおこる).しかし関節軟骨は滑液から栄養を受けているから生存しつづける.整復固定を行うと,頸部端から幼若線維細胞を伴う新性血管が迅速に壊死骨頭内に進入し,壊死骨の吸収と新生骨による置換が始まる.頸部被膜もこれに参伊する.壊死骨の置換完了には2年以上の期間を要すが,この長い期間に亘つて関節軟骨は鋳型となつて生き残り,骨頭の原形を維持するために重要な役割を果す.
 血流を回復した骨頭内に壊死骨置換が進行するに従つて,壊死骨柱が吸収されて抵抗の弱い新生骨の量が増加すると,骨頭の力学的強度が著しく低下する.この時期に骨頭がその強度を越える圧を受けると荷重部にcollapseがおこる.骨柱骨折,血管断裂,血腫形成のためcollapseをきたした骨頭荷重部の新生骨は壊死に陥る.この状態は一般に阻血性壊死と呼ばれているが,上述のような一連の病変の過程からすれば適当な用語でないことがわかる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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