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論述
橈骨末端新鮮骨折—特に整復固定後の再転位について
著者: 井上博1 田中繁徳1 福島賢人1 橋川孝弘1 宮城恒夫2
所属機関: 1久留米大学医学部整形外科学教室 2宮城病院
ページ範囲:P.958 - P.964
文献購入ページに移動Colles骨折によつて代表される橈骨末端骨折はきわめて普遍的な,日常もつとも頻繁に遭遇する骨折であり,Böhler3),Watson-Jones14),Key and Conwell6),Chanlley5)などの成書にすでに治療上の注意を含めて多くの記載がなされている.これらの著書に共通していることは,いかにすれば解剖学的に整復され,その位置に固定が続けられるかであり,特に再転位の発生に対しては十分な注意を払うことを述べている.我々は上記の著書などを参考にし,かつ自家経験を加えてひとつの方法を確立して多年にわたり治療をおこなつてきたが,日常の診療の中で,ただ漠然とした結果すなわち余り重篤な後遺症を訴える者は少ないなどの印象をもつ以外に計数的な裏づけとなる材料をもたなかつた.また治療中の再転位に対するレ線チェックにしても,初診時や整復時の印象で,あるものに対しては数日後に,あるものに対しては1週間後に,あるものに対しては固定除去時まで全くおこなわないなど,特にroutineに定めた方針もなかつた.そこで従来の方法に対する反省と今後の治療改善のための1つの参考とするために,本骨折についてprospectiveな調査をおこなつた.今回は調査症例の概略を述べるとともに徒手整復固定後の再転位を中心とし,若干の治療成績を含めて調査結果を報告する.
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