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臨床経験
筋肉内腫瘤形成を示したsarcoidosisの1例
著者: 荻野幹夫1 井上肇2 三上隆三2
所属機関: 1国立病院医療センター整形外科 2聖路加国際病院整形外科
ページ範囲:P.1045 - P.1049
文献購入ページに移動Sarcoidosis(以下サ病と略す)は,1899年Boeck1)が皮膚とリンパ節の病変を持つ例を報告して以来,その名を冠して呼ばれることが多い特異な疾患である.サ病は全身の各臓器に広く見られる肉芽腫性炎症を特徴とし,経過は慢性で,自然寛解や治癒のある疾患であるが,時には重要臓器の病変のために死亡もあり得るもので,その原因は未明である.サ病が整形外科的に注目されたのは,1904年4)Kreibichによつて骨の病変が報告されて以来であるが,運動器に関する病変としては,中枢および末梢神経,骨,関節および筋肉の病変があげられる.
これらのうち,よく知られている神経および骨の病変を除くと,関節や筋の病変は,臨床的には稀にしか見られないものであり,それだけに,他臓器の病変による症状が明らかでなく,サ病の診断のついていない時には,関節や筋肉の症状のみで,本症が疑われることはほとんどない.他方,臨床症状がなくても,四肢筋肉の生検は,早期のサ病の診断に有用であることは,広く知られている.本文の目的は,筋肉症状の中でも,稀な,腫瘍様病変を示した1例の報告と,多少の文献的考察を述べることである.
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