icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科10巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

カラーシリーズ 手の外科・2

手の開放損傷の閉鎖法

著者: 田島達也

ページ範囲:P.1058 - P.1061

 発生率の高い手の開放損傷,とくに皮膚欠損を伴う挫創をうまくなおす第一条件は,適当な植皮を用いて感染を防ぎ速かな創閉鎖に成功することである.
 指の長さをできるだけ温存するため,ぎりぎりのレベルで輪切り切断(guillotine amputation)し断端面を中間層でおおい"tieover"縫合で皮片を固定する.中間層皮片は生着後次第に収縮し断端は丸みを呈するようになる.

視座

膝蓋骨への雑想

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 Nail-patellar syndromeは1957年Bailerの命名によるものであるが,それまでは先天性膝蓋骨欠損のなかに一括して報告されていた.私も祖父,父,息子の三代にわたる家系調査をしたことがある.昭和16年冬のことで,東北の田舎へ川島,河邨両先生と出掛け,そこで肘,膝,爪などに全く三名とも同じsyndromeを示しているのに驚いた.残念ながらその時の資料が一部紛失して,未だに報告できなくなつたことを両教授にお詫びしなければならない.その当時一体何んという病気かその診断に苦労したものである.Syndromeの名前がつく16年前のことであつた.これらの患者の膝蓋骨はほとんど触れない程に小さいものであつたが,歩行,疾走など膝の機能には全く障害はなかつた.
 膝蓋骨は四頭筋腱が大腿骨顆間の溝の中を円滑に滑動して,膝伸展筋力の能率を高めるためと膝の前面からの衝撃から関節を守るためにあるが,膝蓋骨が無くても大した障害はないようである.

特集I 頸椎後縦靱帯骨化症

頸椎後縦靱帯骨化症3例における剖検所見の検討

著者: 藤井紘三 ,   山浦伊裟吉 ,   上小鶴正弘

ページ範囲:P.1065 - P.1070

 我々は現在までに3例の頸椎後縦靱帯骨化症を剖検する機会を得たので,ここに報告する.なお,第1例,第2例はすでに報告済みのものであるが,最近剖検し得た第3例を加えて,計3例の剖検所見を検討し,その成因,病態に対して若干の考察を行う.

後縦靱帯骨化の進展と分類について

著者: 寺山和雄 ,   間宮典久 ,   山岡弘明

ページ範囲:P.1071 - P.1076

まえがき
 後縦靱帯骨化(以下OPLLと略す)の症例が増加するにつれ,本症と他の疾患との関係すなわち本症の位置づけとか,病型の分類を確立することがますます重要となつた.今回,我々は自験例128例のうち3年間以上の経過を追跡しえた56例を検討して,OPLLとankylosing spinal hyperostosis(以下ASHと略す)との関係,X線像の進展およびその分類について報告する.

頸椎後縦靱帯骨化症の臨床と治療成績

著者: 桐田良人 ,   宮崎和躬 ,   林達雄 ,   野坂健次郎 ,   嶋充浩 ,   山村紘 ,   玉木茂行

ページ範囲:P.1077 - P.1085

はじめに
 本症は一般には,頸椎レ線側面像で後縦靱帯の骨化が椎体の後縁に沿つて後縁とは明らかな境界を有する均等な棒状または層状の陰影として認められるもので,この異常な骨化は椎体側面のレ線断層写真により一層はっきりと証明されるものである.
 しかし臨床的には,典型的な異常骨化巣があるにもかかわらず全く症状のないものから,髄節性の症状,さらに脊髄症状を呈して,歩行障害,膀胱直腸障害など重篤な症状を示すものがあり,この脊髄症状をしばしばみることから注目されて来たものである.

頸椎後縦靱帯骨化症の成因に対する検討—HL-Aに関して

著者: 藤谷正紀 ,   金田清志 ,   原田吉雄 ,   越前谷達紀 ,   大西英夫 ,   大脇康弘 ,   東郷正晴 ,   矢倉英隆 ,   脇坂明美 ,   板倉克明

ページ範囲:P.1086 - P.1090

はじめに
 HL-A抗原(human leukocyte antigen)とは,白血球のもつ抗原であり,赤血球にABO血液型抗原とRh血液型抗原が存在するように,リンパ球の表面にも特有の抗原が存在する.従来このHL-A抗原の研究は,主に臓器移植の型合せを目的として行われてきたが,近年,疾病感受性との相関についても注目されてきた.
 遺伝分析が容易なマウスのH-2系は,人のHL-A系に相当し,この抗原系と白血病との関係は詳しく分析されている.マウスのH-2抗原と白血病ウイルス感受性とに密接な関係があることは,1964年にLilly1)らによつて明らかにされた.すなわち,C3H,C57BLの2系のマウスにおいてGrossウイルス感受性を調べたところ,H-2k抗原をもつマウスに高頻度に白血病の発生がみられ,H-2b抗原をもつマウスでは低頻度にしか発生をみないというものである.このH-2抗原のような組織適合抗原が疾病の感受性にどのような機序で関与しているかということは,Snell2)が,3つの仮説をあげており,最近ではその一つである組織適合抗原座に密接に連鎖している遺伝子座が免疫反応を支配しており,これが疾病感受性に影響を与えているという考えが支持されている.

頸椎後縦靱帯骨化の病態に関する考察

著者: 宮坂斉

ページ範囲:P.1091 - P.1096

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化は日常診療においてしばしば遭遇する疾患であるが,その成因や病態,予後に関してはなお不明な点があり,一定の治療方針を確立しえない所以となつている.今回,248例の臨床的検討を行いこれらの点につき若干の考察を加えたので報告する.

第2回脊椎外科研究会印象記

著者: 小野啓郎 ,   寺山和雄 ,   井上駿一 ,   竹光義治 ,   服部奨 ,   平林洌

ページ範囲:P.1097 - P.1107

頸椎後縦靭帯骨化症の成因
 硬い骨稜が脊髄の前面に喰い込んでいる剖検例を一度でも見たことのある者は,後縦靱帯骨化症の外科治療(切除)についてその限界を痛感するに相違ない.では一体根治させるか,ないしは骨化を完全に抑制する方法があるのだろうか.結局それは結合織の生成,分化,変性などの過程を解明しえてはじめて可能になるテーマなのだろう.靱帯の骨化・石灰化という現象はこの結合織の生理・病理の一分野に属するものにすぎなかろうが,頸椎後縦靱帯骨化症の治療を目指しておそらく急速な研究の進展が見られるだろう.
 第2回脊椎外科研究会の演題1-5では本症の基礎的研究がまさにスタートラインに並んだ観がある.生化学的研究(名古屋大学花村ほか),HL-A抗原を指標とした素因論(北海道大学,藤谷ほか),代謝障害説一糖ならびにCa代謝との関連(天理病院,宮崎ほか),fluorosisとの関連(東京大学,関ほか)および病理組織学的研究(済生会中央病院,佐々木ほか)である.

特別講演

わが国脊椎外科の歩み

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.1108 - P.1113

 わたくしが歩んできた40年ないし45年のあとをふりかえつて,脊椎外科,おもにわが国における脊椎外科の発展変遷の歴史についてお話ししたいと存じます.
 脊椎に関係した外科の歴史はそう古いものではありません.Horsley(1889)の椎弓切除術laminectomy,Kocher(1896)の腰椎椎体切開術lumbovertebrotomy,Ménard(1894),Heidenhein(1900)の肋骨横突起切除術costotransversectomy,Henle,Albec(1911)の脊椎固定術spondylodesisなどはいずれも19世紀末から20世紀初頭にかけて創められたものであります.脊椎脊髄損傷がThorburn(1889),Wagner & Stolper(1898),Mastkorb(1911)らによつて相いついで大きくとりあげられたのもまたこの時期であります.

特集II Myelopathy・Radiculopathy

胸,腰椎移行部椎管狭窄によるミエロパチーと脊髄動脈像

著者: 米沢元実 ,   手束昭胤 ,   山本博司 ,   土居昌宣 ,   井形高明 ,   滝川昊 ,   佐々木徹 ,   山地善紀 ,   成瀬章 ,   森本博之 ,   小川維二 ,   湊省

ページ範囲:P.1115 - P.1123

はじめに
 人の胸腰椎移行部は脊椎損傷の最大好発部位であり,常に過大なstressが要請されていることは周知のとおりである.しかしこの部位では従来より脊椎・脊髄の外傷疾患が主体的に論じられており,いわゆる脊柱原性のミエロパチーについては深く追求されていないように思われる.ところで胸腰椎移行部は脊髄の第二膨大部と円錐部を囲い,また馬尾神経が円錐部を中心に包むような配列で分岐している,従つて,この部位の障害では特異な脊髄症状を呈するばかりでなく,馬尾神経症状,更に根症状をも加わつて多様な神経学的所見を呈する.また脊髄血行動態の解剖学的見地より,これら麻痺発生には神経要素に対する単なる機械的圧迫のみでなく循環障害の関与が十分に予測される,我々は脊髄血管撮影より胸腰椎移行部の椎管狭窄によるミエロパチーが脊髄下端部の主流前根動脈である,Adamkiewicz's arteryと前脊髄動脈の血行循環障害に大きく関係していることを明らかにした.さて,脊髄血管撮影はDjindjian(1961年)1),Doppman,Di Chiro(1964年)2)らより始められ,最初は主として脊髄のA-V malformationの診断に応用された.最近では脊髄血管腫に対し本法は欠くべからざる補助手段となつている.更にDjindjian(1970年)3),Di Chiro(1970年)4)により血管腫以外の脊髄腫瘍においても髄内,髄外の局在性や前脊髄動脈および根動脈との関係が述べられ,診断に有用であることが判つて来た.しかし,その他の脊髄疾患に対する本法の診断価値についての報告は少なく,また脊髄症の脊髄血行障害について多く論じられながらもその血行動態把握の試みは実に少ない.我々は1972年来,400例の諸種の脊椎・脊髄疾患に脊髄血管撮影を施行し,その病態把握と診断価値について検索を重ねて来た.そのうち,胸腰椎部疾患は167例である(第1表).今回は関連病院(小松島赤十字病院)を中心に検討した22例の椎管狭窄に起因した胸腰椎移行部の複雑な神経障害とAdamkiewicz's arteryとその前脊髄動脈との関係について報告する.

頸椎症に伴う解離性の上肢運動麻痺

著者: 大田寛 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.1124 - P.1132

はじめに
 頸椎症症例に上肢の運動障害や筋萎縮を認めることは稀ではない.肩甲部の著明な筋萎縮と上肢の挙上制限を主訴として受診し,レ線上,頸椎症性変化をみる症例にでくわすことがある.しかし知覚障害がごく軽いか,もしくは全く証明できない場合があり,頸椎に由来する筋萎縮と診断するのに躊躇する.このように一見,脊髄性進行性筋萎縮(SPMA)ないし筋萎縮性側索硬化症(ALS)をおもわせる臨床像を呈しながら,原因が頸椎症に起因するradiculopathyと判明した10症例について特徴を述べたいと思う.うち一例は解剖所見から障害部位と原因をほぼ確認することができた.この病態は1956年Keeganが上肢のdissociated motor lossとしてすでに1例報告した症例と同じものと考えられるが,頸椎症におけるradiculopathyの典型例として興味ある臨床像を示すので報告する.

頸椎症性脊髄症におけるdynamic canal stenosisについて

著者: 片岡治 ,   栗原章 ,   円尾宗司

ページ範囲:P.1133 - P.1143

緒言
 頸椎症性脊髄症の脊髄症状発生に関与する単純X線上での変化で,脊髄圧迫の原因としての脊椎管狭窄の因子となりうるものは,developmental canal stenosis以外に,degenerative canal stenosisがある.後者には,myelographyやdiscographyにより確定診断がなされる頸椎椎間板ヘルニアや黄靱帯のinfoldingなども含まれるが,単純X線上では,後骨棘形成,platyspondyliaや椎間関節の変形性関節症および椎体のposterolisthesisなどの退行変性変化が数えられる12)(第1表).そして,この椎体のposterolisthesisによるdynamic factorについての検討はまだ十分になされていない.
 本論文の目的は,頸椎症性脊髄症手術症例を対象として,椎体のposterolisthesisによるdynamic factorを有する本症を解説し,手術成績,手術法の選択などに関する知見を含め,dynamic factorの本症発生因子としての重要性を検討するものである.

Cervical myelopathyの保存療法

著者: 関寛之 ,   黒川高秀 ,   津山直一 ,   田渕健一

ページ範囲:P.1144 - P.1148

はじめに
 頸部脊髄症に対する外科的治療を考えるとき,術前に手術後の回復の度合を予見しにくく,手術操作が難しい上に高齢者が多いなど手術に伴うリスクが他の疾患にくらべて高く保存的治療ですむものならそうしたいと考える整形外科医は少なくないであろう.我々は頸椎の安静保持を目的とした保存療法で好結果を得ており,本法を頸部脊髄症治療のfirst choiceとして試みるようになつてから本症の手術症例は従来にくらべて半数以下に減少した,頸部脊髄症の発現機序を考えるとき脊髄に対する圧迫因子だけでなく,頸椎の運動に伴つて脊髄に加えられるであろう摩擦などの動的障害因子の存在を推察させる臨床的知見は多い.我々の保存療法のprincipleは,頸椎の安静保持により動的障害因子をとり除き,脊髄障害の改善を期待するところにある.

脊髄動静脈奇型の臨床症状,診断および手術経験

著者: 菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   唐澤淳 ,   榊寿右 ,   吉田泰二

ページ範囲:P.1149 - P.1153

 脊髄動静脈奇型(spinal AVM)の報告は1885年Hebold,1888 Gauppにより行われており,決して新しいものでない.しかし本疾患が,臨床症状の原因疾患として正しく診断され,かつ適切に治療されるようになつたのは近年のことである.それ以前は,autopsyで見出されたり,たまたまspinal explorationで見出されたにすぎない.
 脊髄動静脈奇型は,Rasmussen,Kernshan,Newman,Kraynbuhl,Yasargil,Pia等の報告によると脊髄腫瘍の4.42%〜11.5%のincidenceであるとされている.

Cervical myelopathyの経過と治療適応

著者: 柴崎昌浩 ,   河西成顕 ,   平林洌

ページ範囲:P.1154 - P.1160

いとぐち
 頸部脊椎症の概念は,Brain,Northfield,Wilkinson(1948)らにより確立されたが,しばしば随伴する脊髄症状の発現機序については各種の説があり,いまだ完全に明らかにされたとはいえない.現在ではその中でも椎間板変性に起因した骨棘ならびに突出椎間板により脊髄が直接圧迫されて生ずるとするものと4),圧迫により脊髄栄養動脈の障害を来たし,その結果脊髄の血行不全を介してMyelopathyを呈するに至るとするものとが有力である.
 Cervical myelopathyに対する手術は2),これらによつて生じた脊髄の変化が可逆性の状態のうちになされるべきことはいうまでもないが,他方Brain(1952)1,3),Lees(1963)7)の報告にもある通り,Cervical Disordersはある時期には,ある程度の障害を残しながら症状が固定化してそれ以上には進まない場合も多い.したがつて治療の適応を決めるに当つては,単に現症を把握するのみでなく,そこに至る経過を検討し,以後とるであろう経過を予測しなければならない.

Cervical myelopathy再手術例の検討

著者: 今井健 ,   森本允裕 ,   中原進之介 ,   岡本吉正 ,   児玉寛 ,   村川浩正 ,   川下哲 ,   西原伸治 ,   河野光信

ページ範囲:P.1161 - P.1167

はじめに
 Cervical spondylotic myelopathyや後縦靱帯骨化によるmyelopathyの手術をはじめて10余年になり,その結果も数回にわたり報告してきた.症例の増加にともない,現在では私達の臨床的,X線的理解も深まり,症例により,前方固定術,あるいは椎弓切除術を選ぶようになつた.しかしながら,術後まつたく症状の改善がみられなかつたり,一定期間は有効であつたが,その後症状の増悪をきたしたため再手術を必要とする症例もある.再手術をせざるをえなかつたものを検討してみると,年齢,臨床像の把握,X線所見,術式の選択,手術高位の診断等さまざまな問題について反省させられる.これらの再手術例を検討し,再手術を必要とした理由を考えるとともに,現在の私達の本症に対する手術的療法について述べたい.

第3回脊椎外科研究会印象記

著者: 津山直一 ,   小野啓郎 ,   小野村敏信 ,   片岡治

ページ範囲:P.1168 - P.1177

Myelopathy,Radiculopathyの診断
 第3回脊椎外科研究会においてはMyelopathy,Radiculopathyの診断についても多くの新しい研究発表が行なわれた.
 Myelopathy,Radiculopathyともに比較的新しい疾患概念であつて,主として頸椎の変性性変化による脊髄または脊髄神経根の障害によつておこる病態であるが,その成因は明らかにされているわけではない.機械的な圧迫が脊髄や末梢神経に加わるためとする考え,動脈圧迫による動脈性阻血を重んずる考え,静脈圧迫による欝血を主因とする考え,圧迫除圧擦過などの反復する外傷による摩擦性神経炎(friction neuritis)的要素を主んじる考え,ひいては炎症性の因子の関与を考える考え方があり,おそらくこれらの総合が病態を複雑なものにしていると考えられるとともに,原因的治療を行ううえにはそれぞれの因子の大きさ,病変部位程度と病燥との相関が是非明確にされなければならないテーマとなつてくるのである.

--------------------

臨床整形外科 第10巻 総目次 フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら